香港の驚きの「せっかち」事情 会計でもたつくと「小銭を見せろ」
あわただしく感じることもあるけれど、活気に満ちあふれています(画像はイメージ)、

香港の人は「せっかち」だとよく聞く。しかし、実際に行ってみると、予想以上に「せっかち」を感じるポイントが多数ある。


その代表的なものをいくつか挙げてみたいと思う。


(1)エスカレーターが速い


「エスカレーターのスピードが速い」とはよく聞く話。だが、実際に乗ってみると、その速さにはビックリする。カタカタカタと細かい音を立てながら、すごいスピードで動く。日本にも通常のスピードのものと別に、「高速運転」版が並走している場所はあるものの、高速運転版すら、香港の速さの比ではない。
特に下りは怖くなるほど。高齢者は怖くないのか不思議に思うが、普通に乗りこなしている。
ちなみに、歩くスピードも速い。


(2)地下鉄のドアの開閉も速い


地下鉄にはホームドアがあるが、電車のドアが閉まるスピードがものすごく速い。日本の場合、「ブーッ」と鳴ってから閉まる動きが始まるが、香港では「ブーッ」と鳴りながら閉まる。この違い、意外なほど体感的には大きい。「ブーッ」と聞いて「急いで乗らなきゃ」と思う日本の感覚だと、ドアに挟まってしまう。


(3)信号機も速い


信号もまた、テケテケテケという高速の細かな音を立てる。
しかも、面白いのは、信号が変わった途端に高速のテケテケ音が鳴り、それが徐々にゆっくりになること。日本の場合は(というか普通は)、ゆっくりの音から、「早く渡らないと、信号変わっちゃうよ」的意味で音が速くなっていくものだろうに、逆なのだ。

だから、信号がかわるなり、「急いで渡らなきゃ」という気分になって焦らされるが、香港をたびたび訪れる人の中には「この音を聞くと、香港に来たなあと思う」「懐かしい気持ちになる」という人もいるらしい。

余談だが、台湾の信号機の場合は、かわった瞬間から数字でカウントダウンしてくれるので、けっこう便利。
また、ベトナムでは信号のない場所が多く、市街地の大通りなどは、車がバンバン行き交うなか、必死の思いでなんとか渡っても「もう二度と戻れない」気分になるのだが、それでも数日間滞在するうちに慣れてくる。人間の順応性って、すごい。


(4)店員さんの仕事も速い


スーパーやドラッグストアで、小銭を出すためにまごまごしていると、次の人の分をさばき始めることも。また、なかには小銭を見せろと言い、必要な分だけとって返してくれる店員さんもいた。この間、すごいスピード。
無防備な日本人感まるだしだが、多めにとられていることもなかった。


(5)せっかち&親切な香港の人々


飲食店で広東語のメニューにまごまごしていると、すぐにいろいろ勧めてくれる。かといって、別に高額のメニューを押し売りするのではなく、単純に売れ筋らしい。
また、ドラッグストアでも、棚の前で迷っていると、「それよりこっちのほうが成分が良い」と、自分が普段使っている商品を勧めてくれた。これも高額なものじゃなく、単純にオススメのものらしい。

さらに、セルフサービス式のB級グルメ店では、隣席の若いお姉さんにどのメニューを食べているのか尋ねただけで、「これよりも、香港らしいメニューならこれと、これと……」とオススメを教えてくれ、さらに周りの席のファミリーにも聞いてくれた挙句、カウンターで注文までしてくれて「良い旅を」と笑顔で去って行った。この一連の流れもものすごい速さである。



(6)せっかちゆえのボディタッチも?


電車内の入り口付近や、駅で並んでいるときなど、人ごみの中で特に邪魔な場所に立っているわけでもないのに、知らない人に肩に手を触れられたり、荷物に手をかけられたりすることがしばしばあった。
日本だったら、「おります」「すみません」などと声をかけ、スペースをあけてもらって通るところ、いきなり手で押したり、触れたりしてくる。そのために、思わずビックリしてしまうと、「Sorry」と言われることもしばしば。
別に「どけよ!」などという苛立ちで押しているわけではなく、パーソナルスペースの違いなのだろう。

いろんな場面で「せっかち」を感じる香港。でも、親切で、ちょっとお節介で、非常にあたたかい町なのだった。

(田幸和歌子)