チーターの鳴き声がライオンと違ってカワイイのはなぜ?

同じネコ科の動物であるチーターとライオン。ネコ科の大きな肉食獣というと「ガオー!」という迫力のある鳴き声をイメージする方が多いと思いますが、実はチーターの鳴き声は予想外にかわいいことはご存知ですか?





まるでネコのようなチーターの鳴き声に驚いた方も多いはず。同じ肉食獣なのにどうしてこんなにかわいいの? その理由を、よこはま動物園ズーラシアの有馬飼育員に聞いてみました。

なぜ鳴き声が違うの?


――なぜライオンとチーターの鳴き声は違うのでしょうか?
「舌骨の骨化に違いがあるようです。骨化とは軟骨など身体のある組織が石灰化して、私たちが普段イメージするような骨となることをそう呼びます。また舌骨とは舌根の下部にある馬蹄形の小骨のことを言います。ライオンはヒョウ属に属するのですが、ヒョウ属は舌骨の骨化が不完全であるため咆哮することができます。ですが『ニャー系』の声は出せません。
一方チーターはネコ属に属しているのですが、ネコ属は舌骨が完全に骨化しているので咆哮できません。その代わり『ニャー系』の声は出せます。舌骨の発達の違いによって鳴き声が異なります。また海外の文献によると喉頭や咽頭の解剖学的な違いが鳴き声に影響を与えているという説もあります。口の中の大きさや組織構造、機能などの『至近要因』(「舌骨の骨化の違い」は、こちらに当たります)と、社会性や生息環境などの『究極要因』が影響をしあい、違いが生まれているのではないかと推測されます」

――なるほど。骨の発達に違いがあるんですね。そうなるとライオンの咆哮は威嚇のようなイメージがあるのですが、チーターが鳴く意味はライオンと異なってくるのでしょうか? ニャーと鳴いて威嚇するのもかわいいですけれど。

「まずライオンについては、ライオンの咆哮は数キロ先まで届いて、自分の存在を示す縄張りの役目もあるようです。飼育下では何かのタイミング、例えば飼育員が獣舎に入ったり、刺激があると一頭が吠えだし、皆吠えます」

――確かに動物園に行くとライオンが何頭も吠えてる時がありますね! 縄張りの役目があるというのはサバンナで生きていくなかで大切な機能といえますね。チーターはどんな目的があるのですか?

「いろいろありますが、甲高い『キャン』とか『グルル』とかは友好的な感じで、相手を呼ぶときに鳴いています。縄張りという役目はチーターにはないようですね」

――チーターはネコに近い感じですね。鳴いてるときは友好的なときと思うとさらにかわいく感じます。

「ライオンの咆哮は自分の存在を遠く(近く)示す縄張り的なもの。チーターの『キャン』とかは見えている相手とのコミュニケーションといった感じでしょうか。実はライオンのオスも近くにいるメスには柔らかい鳴き声でコミュニケーションを取っているんですよ」

――それぞれの目的がちゃんとあるんですね。オスライオンのメスへのコミュニケーションは人間みたいで面白いですね。私も動物園に行って、鳴き声を聴きたくなってきました! 有馬さん、ありがとうございました。

(ポンコつっこ)

取材協力:よこはま動物園ズーラシア
http://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/zoorasia/