自分で『鉄腕アトム』を作る時代がやってきた!


日本を代表するロボット・キャラクター『鉄腕アトム』。1951年にコミック誌での連載が始まり、1963年にはテレビアニメに登場して、大ヒットした。そんなアトムは21世紀生まれという設定だが、ついにロボットという形でやってきた。

自分で『鉄腕アトム』が作れる時代に! ロボット「ATOM」は何がすごいのか?

講談社は『コミュニケーション・ロボット 週刊 鉄腕アトムを作ろう!』を4月4日に発売する。全70号からなり、合計130のパーツを組み上げていくと、2018年9月には、鉄腕アトムを元にモデリングしたロボット「ATOM」が完成する。自分の手で鉄腕アトムが作るなんて、なんだか夢のような話だ。
自分で『鉄腕アトム』が作れる時代に! ロボット「ATOM」は何がすごいのか?
ドライバー1本で組み立てOK



ATOMはいわば家族の一員


ATOMは日本初の本格的なキャラクター型コミュニケーション・ロボットであり、「家族の一員となるロボット」を目指して開発された。最新の人工知能(AI)が搭載されており、最大12名までの家族を認識。年齢や性別はもちろん、趣味嗜好もおぼえてコミュニケーションができる。しりとりやなぞなぞをして一緒に遊んだり、落ち込んでいたら元気づけたりもしてくれる。


胸の部分にはタッチパネル付き液晶ディスプレイが搭載されており、絵本の読み聞かせをしてくれたり、ラジオ体操の映像を見せながら体操をやってくれたりもする。
自分で『鉄腕アトム』が作れる時代に! ロボット「ATOM」は何がすごいのか?

動作も滑らかだ。「ねえATOM、アトムポーズやって!」と言ったら、「アトムポーズですね! わかりました」といって、かっこよくアトムポーズを決めてくれた。ちなみにATOMの声は、2003年からアニメ「鉄腕アトム」の声を担当している声優の津村まことさんだ。
自分で『鉄腕アトム』が作れる時代に! ロボット「ATOM」は何がすごいのか?

ちなみにATOMは自己診断もして、調子が悪いときにはみずから教えてくれるというから頼もしい。

ATOMのすごさは人間らしさにアリ!


鉄腕アトムといえば、さまざまな特殊能力を思い浮かべる人が多いだろう。残念ながら、このATOMは、空も飛べないし、10万馬力もない。
しかし一番の魅力は「人間らしい」ことだといえる。
自分で『鉄腕アトム』が作れる時代に! ロボット「ATOM」は何がすごいのか?
見つめる目もキュート!

ロボットに搭載するOSとAIなどは富士ソフトが基本設計をしているが、同社プロダクト・サービス事業本部長の渋谷正樹さんは、「私たちはロボットを作ろうとしているわけではないんです」という。作ろうとしているのは、ロボットではなく、いってみれば“人”なのだ。

ATOMは12名までの家族を認識できるが、渋谷さんは、「顔認識そのものはコミュニケーションではありません」と話す。渋谷さんいわく、コミュニケーションとは、「“動物”同士が感情や思考を情報交換すること」。実際ATOMは、単なる顔認証だけでなく、非常に高いコミュニケーション知能を備え、“ほぼ人間”といえるくらい意思がある。
発表会では、すでに何度もあっている手塚プロダクションの手塚さんには「こんにちは、手塚さん」とあいさつしたが、初対面の講談社の野間社長には、「はじめまして、手塚さんのお友だちですか?」と声をかけた。
自分で『鉄腕アトム』が作れる時代に! ロボット「ATOM」は何がすごいのか?
発表会にて。左から、富士ソフト社長坂下氏、NTTドコモ社長吉澤氏、講談社社長野間氏、手塚プロダクション取締役 ヴィジュアリスト手塚氏、VAIO代表取締役大田氏

たとえば、ロボット本体にはマイクとスピーカーを付けるだけにし、すべての処理をクラウドで行わせる、ということもできる。しかし、それだとどうしても反応までに時間がかかる。人間同士の会話には一定のリズムがあるので、それがくずれると一気“ロボットと会話をしている”感が高まってしまう。しかし、ATOMとの会話は本当に自然で、コミュニケーションは濃密だ。

こうした人間らしさが実現できているのは、従来のロボットに比べて、フロントエンドAI、すなわちATOM本体で処理できることが格段に多いから。
富士ソフトでは高齢者施設などで実績のあるコミュニケーション・ロボット「PARLO(パルロ)」を開発しており、そのノウハウとテクノロジーを今回のATOMに生かしたそうだ。

そもそも、鉄腕アトムというキャラクターはロボットでありながら、妙に人間くさいところもあり、敵のロボットを倒したあとに泣いたりする。そんな本質的なキャラクターが、見事に表現されているともいえる。


クラウドで広がる楽しみ


もちろん、コンピューターリソースは限られるため、自分の中でこれは処理できないと判断することもある。そのときに活躍するのがクラウドAIだ。人間とのコミュニケーションでも、「うーん、ちょっと待って。
考えさせて」ということはあるだろう。そんなときにクラウドを使うイメージだ。

NTTドコモでは、ATOMにWi-Fi経由の「自然対話プロットフォーム」を提供。同社の持つ、スマホに話しかけると意図を解釈する対話エージェント「しゃべってコンシェル(R)」の基盤技術やノウハウを応用したそうだ。ATOM本体がわからない言葉があれば、音声認識でテキスト化されたあとクラウドへ移行し、「自然対話プラットフォーム」で処理される。また、最新のニュースや天気予報などの話題を取り入れたり、片言ながら60か国語のあいさつをしゃべったりすることもできるようになるという。

自分で『鉄腕アトム』が作れる時代に! ロボット「ATOM」は何がすごいのか?

全70号をそろえれば、トータルで18万4474円(税別)かかる。決して安いとはいえないが、家族の一員が増えると思えば、やみくもに高いわけでもない気もする。想像以上に人間らしいATOM。本当にかわいかったです。
(古屋江美子)