師走の気ぜわしい日々。
疲れてくると口内炎ができることがあるが、これ、傍から見るとなんともないとはいえ、地味にけっこう辛い。


そこで、何か解消法がないかとネットで調べたところ、気になる方法が見つかった。

それは「ココアパウダーを塗る」というもの。

なんだか謎めいていて恐ろしいけど、「口に入るモノだから、まあ良いか」と、とりあえず恐る恐る試してみた。

まず小皿にココアの粉を少量出し、鏡を見ながら、口内炎に直接塗ってみる。この作業、やっぱり謎。塗った瞬間はなんともないが、ほどなくじんわりと沁みるような痛みが出てきた。

しかし、粉でコーティングされて周囲にあたらなくなるためか、じきに痛みが和らいできた気がした。さらに翌日には不思議なことに痛みがひいていた(※あくまでも個人の感想です)。

原料のカカオに関する研究結果はあるものの…


なんだかキツネにつままれたような気がしたが、結局、なぜなのか。
日本チョコレート・ココア協会に聞くと、「ココアで口内炎が改善するというのは聞いたことがありません」。
「ココアに抗酸化作用や抗菌作用がある」という研究結果はあり、もしかしたら人によっては症状が軽減するケースはあるのかもしれないものの、学術的に検証されたことはないという。

また、同協会の第19回シンポジウム内で埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター准教授の間藤卓先生が行った講演では、ココアの原料・カカオの臨床例が紹介されている。
それは、「1997年に外傷患者がチョコレート摂取をきっかけに、難治性感染性創部が著明に改善したこと」からカカオに抗菌性、治癒促進効果があるのではないかと発想し、カカオの臨床応用例を調べたというもの。
調査により、様々な施設でココアが利用されていること、利用目的の一つに「褥瘡(床ずれ)の改善」が挙げられていたこともわかっている。
しかし、これはあくまでココアの摂取によって期待されることであり、「ココアパウダーの塗布」とはまた、話が異なる。

皮膚科医は「聞いたことないですねえ(笑)」


そこで、ココアと口内炎の関係について、都内の何人かの皮膚科医に尋ねてみたが……。
「口内炎にココア? 聞いたことないですねえ(笑)」
「医学的にみておすすめできる根拠はありません」
「いろいろ民間療法で言われている方法がありますが、エビデンスはないと思いますよ。口中の菌の繁殖を抑えることが必要なので、薬を塗る、うがいをするなどが良いと思います」
残念ながら、「口内炎にココア」を推奨する医師はいなかった。

医学的根拠は不明だが、個人的には改善が見られた「口内炎にココア」。

どうしても辛いときの秘策として、ひっそり覚えておこうと思う。
(田幸和歌子)