最近、足が痛い、足がだるい、という人が増えてきているらしい。

現代人は足が崩れてきているのではないか、足が歪んでいるのではないか……と気がついたのは、整体師の松田さん
患者さんの足に触れるたび、現代人の足に危機感を抱いていたところ、「足半という履き物に出会いました」という。


大人用でもかかとが飛び出すサイズ


足半の読み方は「あしなか」。種別でいえば草履なのだが、特徴はその大きさだ。
西郷さんも履いていた「足半」は昔の日本の叡智が詰まった一品だった
掌に乗りそうなくらい、小さくて可愛らしい足半。

写真の通り、大人用でも長さ10センチ、幅は9.5センチほど。一見すると、子供用? と思ってしまうかわいらしさだが、この大きさで正真正銘、大人用。

もちろん、履けばカカトが外にとびだし地面につく。でも、これが正解。
鎌倉時代から戦後まで日本で履き続けられた草履で、江戸時代には飛脚が履いて走っていたという記録もあるそうだ。上野恩賜公園の西郷隆盛像もよくよく見てみると、この足半を履いている。残された少ない資料をもとに、一年をかけて松田さんが現代に足半を復元した。

大きさが足の半分ほどしかないので、履きにくそうに見えるが、実際は足にぴったりと密着し、動きやすい。どんなに動く場所でもバランスを取れることから、船の上で作業をする人、農作業をする人、また、戦場で激しく動き回る武士たちに好まれたのだそう。

昔の日本人に愛されてきた足半だが、現在は長良川の鵜飼い伝統の履き物として履かれているくらいで、ほぼ消えて無くなってしまった。

その理由は、靴の存在だ。現代社会において、草履や下駄の日常履きはすっかり影を潜めてしまった。それと同時に、足半も姿を消した。
現代の日常生活で、足半を履き続けることは到底無理だが、
「たまに履くだけでも足のゆがみを矯正することができます」
と松田さんはいう。
西郷さんも履いていた「足半」は昔の日本の叡智が詰まった一品だった



カカトを揚げずにまっすぐに下ろす


おすすめの使い方は、まずは普通に履いて5~10分ほど歩くこと。
歩き方はカカトを揚げずにまっすぐに下ろすのが鉄則。
カカトを下ろすと自然、つま先が高くなる。つまり普段、靴を履いている人からすれば全く逆の足の向きになる。
最初は慣れないので、痛い、歩きにくい、などがあるかもしれないが、「無理をせず、とにかく慣れるまでゆっくり履き続けるとそのうち自然に馴染んできます」と松田さん。
馴染んでくれば履いたまま掃除をしたり、散歩をすることも可能。昔は飛脚が履いていたのでマラソンなどで使いたいところだが、それは自分の足とご相談を。
もし外で履くときは素足ではなく、汚れや怪我を防ぐためにも足袋を付けた方がいいようだ。

西郷さんも履いていた「足半」は昔の日本の叡智が詰まった一品だった
並ぶとかわいい。

現代でも戦後直ぐくらいまでは農村や漁村では履いている人も多かったという足半。履きかたのコツは、「鼻緒の前壺(親指と人差し指の間にくる部分)に指の股が当たるほど深く入れず、鼻緒を指でつまむように、軽く引っ掛けて履くこと。そうすると安定して立つことができます」とのこと。
西郷さんも履いていた「足半」は昔の日本の叡智が詰まった一品だった

現在は、被災地の女性たちの心の支援、自立支援を目指した「ふんばろう東日本支援プロジェクト」で、「足半ふっくら布ぞうり」という新作も作られているそうです。
(のなかなおみ)