100年前の育児書を読んでみた! 「イヤイヤ泣き」を止める戦前のワザ

親泣かせのイヤイヤ・・・・・・


子育てをしたことのある人にはわかるだろう。親も子も悪戦苦闘する「イヤイヤ期」。昔から子供のイヤイヤ期はあったはずだ。
昔の親はどう対処していたのだろう?

そこで約100年前の育児書を読んでみた。『親のため子のため』(岸邊福男・著)。大正6年(1917年)発行の育児書である。

威(おど)し泣き


イヤイヤ泣きは、「威(おど)し泣き」と呼んだらしい。どのように泣くかというと……。

"大きな声を張り上げてヤンヤンと泣き出し、なおその上にひっくり返ってじだんだを踏み鳴らして荒れまわるのであります。"(64ページ)

おお、まさに私たちのよく知るイヤイヤではないか。
そして、例えばおもちゃをねだって泣いている時にたいていの母親が取る行動が下記のようだ。

"『今日だけは買ってあげます。明日からは、そんなヤンチャを言うとお父さまに言い告げますよ』と条件付きで子供のねだりを認可します。その実は子供に征服されたのであります。"(65ページ)

なんだか身に覚えのある話である。

100年前の育児書を読んでみた! 「イヤイヤ泣き」を止める戦前のワザ


威し泣きの止め方は?


最も知りたかった、イヤイヤ泣きの止め方はこれだ。

"子供の両手を堅く握って、ギッとその顔を睨んだまま一言も口をきかないのであります。
"(66ページ)


え、それだけ? それだけだとまだまだ暴れない?

"すると、子どもは更に頑強に抵抗し始めて、蹴るやら、唾を吐きかけるやら、甚だしい時は噛み付く子もあります。"(同)

そうでしょ、そうでしょ? いや唾を吐くとは、それもなかなか凶暴な子だが。それから?

"けれども平然と構えて、なすがままにしていると、母親の意中の深さが測れない。そこで子供もそろそろ怖気がつく。かくして二、三十分間両手を握りしめたまま無言でおれば、如何なる乱暴な子供でも降参をします。"(同)

なんと。
三十分も子供の目の前で睨めっこしろというのか。それ長すぎない?

"この二、三十分の無言の応戦は、随分長時間に感じますが、これが降参させる唯一の手段であります。叫び泣き、乱暴が下火になった頃初めて徐々に説諭すると、母の武からざる無限の威光に心服して、強情するような事はなくなります。"(67ページ)

つまり、子供がいかに泣いて暴れていようと、子供の両手を取って(暴れている手を取るのは至難の業だが)対峙し続けるのだ。

なかなか難しいことだ。これは親の忍耐力をも試している。
しかし、これをやり遂げれば子供に親の「武からざる無限の威光」を認めさせられるのか。

100年前の育児書を読んでみた! 「イヤイヤ泣き」を止める戦前のワザ


現代にも使えるか?


この方法について、イヤイヤ期専門悩み相談カウンセラーの西村史子さんに聞いてみた。
――効果はありますか?
正直、泣いている子を二、三十分見続けるなんて無理ですね。落ち着かせるためには効果はあると思いますが、子供にとって苦痛でしかないと思います。

――親の忍耐力も必要ですが。
とてもいると思います。
私は無理です。完全に子供のため! と思っていないとできません。

――実践すると、子供の気持ちとしてはどんな変化があると思いますか?
親が向き合ってくれていると感じ、気持ちを伝えようという行動に結びつくと思います。また、親には逆らってはだめということも伝わるかも。

ということなので、現実的に考えるとやはり実践するのは難しそうだが、子供が落ち着くまで親が冷静な態度で見守り続ける、という姿勢は通用するのかも。

100年前の育児書を読んでみた! 「イヤイヤ泣き」を止める戦前のワザ


毎日のイヤイヤに悩んでいるパパママの皆さん、騙されたと思って一度試してみてはいかがだろうか。
ただし、時間に余裕のある時に限るだろうが。
ちなみに、この二、三十分の間は一言も喋ってはいけないらしい。

"この無言が大切なる事で、これを守らないで、(中略)『母さまを蹴って罰が当たりますぞ』などと言葉を挟むと、消えかけた火に油を注ぐようなもの"(67ページ)

だそうだ。二、三十分無言でいるのもなかなか難しい。
しかし、100年前のパパママたちも同じようにイヤイヤの子供に手を焼いていたんだ……と思うと、それだけで少し気持ちが軽くなる気もする。
(河野友見 Kono Yumi)

参考: イヤイヤ期専門悩み相談カウンセラー 西村史子さん ブログ
http://ameblo.jp/gu-taramamanoikinukiikuj/

参考文献:『親のため子のため』(実業乃日本社 岸邊福男・著)
     ※読みやすくするため、現代かなづかいに直して掲載しています。