甲子園中継にいつも映る「ラガーさん」とは何者か 自由席を「私物化している」と批判の署名活動も
『甲子園のラガーさん』(オークラ出版)

バックネット裏の最前列でいつもラガーシャツを着て、全国高校野球大会を観戦していることをマスコミに取り上げられ有名になった「ラガーさん」こと善養寺隆一さん(49)。

今回の大会をきっかけに「高校野球大会の自由席を私物化している」と抗議する署名活動がネット上で始まるなど議論が巻き起こっているが、そもそもラガーさんとは一体どんな人物なのか。


甲子園の門の前で毎日野宿


ラガーさんは2014年4月に自伝となる『甲子園のラガーさん』(オークラ出版)を出版している。同書によると1999年から「通し券」を購入して全試合を観戦し始めた。甲子園は全席自由席だが、バックネット裏の中央特別自由席「A段73番」がラガーさんの「指定席」だ。

普段は東京在住で独身。父の立ち上げた印刷会社に勤務し、新幹線を利用するのは「贅沢」だとして、甲子園へは高速バスで移動する。近年は開門前から並ぶ人が増えたので最前列の席を確保するため、試合期間中は甲子園の門の前で野宿している。朝4時には起床するそうだ。


ラガーシャツを初めて着たのは2001年の第83回選手権だった。特別なこだわりやメッセージがあったわけではないという。以前は蛍光色のジャンパーを着ていたが、周囲の人と被ってしまうため、「これは目立たたない! 蛍光色"以外"の服にしよう」と考えていたところ、甲子園球場近くのダイエーで安いラガーシャツを売っているのを発見した。

ラガーシャツ姿がトレードマークとなって甲子園やそれ以外の場所でも声をかけられるようになったことを喜び、現在では長袖19枚、半袖29枚、合計48枚を揃える。試合ごとに高校のチームカラーなどに合わせてシャツを着がえるという。2010年に野球雑誌「野球小僧」で初めて取材を受けた後、テレビやラジオにも出演するようになった。


「8号門クラブ」の存在


ラガーさんは「8号門クラブ」と呼ばれる団体のメンバーで、同じように甲子園で野宿などを行う人々が約100人加入している。バックネット裏で観戦するために活動している人は複数いるが、中でも特に目立っているのがラガーさんということのようだ。「8号門クラブ」には暗黙のルールがあるなど厳しく、ラガーさんも入会するまでに10年かかったという。

2014年以降は書籍を3冊出すなど甲子園の観戦以外にも活発に動いている。Facebookに「ラガーさん」としてのアカウントを持っているほか、YouTubeに「ラガーちゃんねる」を開設してすでに20本以上の動画を投稿済みだ。

ネットでは「なんで観客席を私物化してるわけ?」という指摘や、試合中に居眠りしていることなどを挙げて「目立ちたいだけで野球興味なし」といった非難の声が出ている一方で、野球ライターのキビタキビオさんは、
「8号門クラブのネット裏席占拠は別として、ご本人は中学生がそのまま40代後半になったような人なので黙認頂ければ…と、個人的には思う。
8号門の人からも長年全試合観戦を続けたことで徐々に認めてもらってあの席に到達しただけらしいので」

とツイートしている。