昔の『こち亀』で、異常な“車好き”が高じてフェラーリ・テスタロッサで生活する一家が描かれていたのを覚えています。3人家族がムリヤリ、フェラーリ内で生活する物語。
う~ん、私にはそこまでの勇気はないなぁ……。
だけれど、自宅内のどこかに車のテイストを盛り込めたら、男の子としてキュンとしてしまうでしょうねぇ。

というわけで、見つけましたよ! ファッションブランド「SEAL(シール)」が4月30日より販売中の『SEALスピーカー』を見てください。

廃タイヤを再利用したスピーカーで、ジャズを聴いてみた


もう一度、タイヤの中央部を見てください。……ほら、スピーカーがある!2007年に立ち上がった同ブランド、耐久性に優れた「大型車用廃タイヤチューブ」をメイン素材に使用し、今までにバッグやショルダーバッグ、メッセンジャーバッグ、小物等を製作してきています。目的はリサイクル、要するに産廃物の商品化。


この志には、感服せざるを得ません。しかし、スピーカーとなると……。強烈だし、奇天烈過ぎる。一体、なぜこのような商品を発表したのでしょうか?
「タイヤの外側って、国内では年間で約1億本が捨てられているんですね。そこで『タイヤの外側を、そのまま使ってしまおう』と考えたのが始まりでした」(SEAL代表・堀池洋平さん)
当初はタイヤを積み重ねた家具などのアイデアが思い浮かんだが、最終的にはスピーカーに行き着いた。中身の空洞を使え、製品になった時に素材も活き、何よりインパクトは十分。
なるほど、確かに“タイヤのスピーカー”は必然かもしれません。絵的にもハマってるし! 今振り返ると、家具というアイデアは凡庸でした。ナイス結論です。

ところで、タイヤを使うと音に影響はあるのだろうか? まさか、見た目のインパクトだけを狙ったわけではあるまいに……。
「音が柔らかくなります。いわゆる“シャリシャリ音”ではなく、重低音の“ズン、ズン!”という感じでもないです。
ただスピーカー自体は大きいので、迫力は出ます」(堀池さん)

いくら解説しても、実感が沸かないでしょう? では、実際に再生してもらいたいと思います。
「結構、アコースティック系は反応がいいなという感じがします。じゃあ、ジャズを流しましょうか」(堀池さん)

へぇ~! ルックスから屋外でバーっと拡散させるような光景をイメージしてましたが、真逆ですなぁ。スピーカーがタイヤに覆われ、音がリスナーめがけて真っ直ぐ届くという感じ。家の中に置いて聴きたい鳴り方です。
「あと、『音が丸くなる』とはよく言っていただけます」(堀池さん)

ちなみにこのスピーカー、次モデルの開発もすでに想定されているらしい。
改良を重ね、より良い音を目指します。
「現モデルはスピーカーとタイヤの隙間がピタッとしているのですが、まだ多少空気が漏れるのでもっと密閉し、かつタイヤ内に吸音材を巻いてみようと思います。また接合部分に鉄を使っていますが、ここに木を使うことも考えています」(堀池さん)
実は木バージョン、すでにサンプル品が出来上がっているという。

廃タイヤを再利用したスピーカーで、ジャズを聴いてみた


「これはスピーカーを2つにしてるんですが、もしかしたら1つより2つの方が細かい音が出るかもしれません。実際、高音が映えるようになりました」(堀池さん)
確かに。アコースティックギターが、より生々しく聴こえます。


そんな『SEALスピーカー』に対する、今までの反響について。
「大きく2つあり『インテリア性がいい』って言っていただけるお客様と、もう一つは『臭そう』ってよく言われます(苦笑)」(堀池さん)
臭そうって……。特に女性は、「家の中には置きたくない」という心理が働くみたいです。でも、大丈夫。高圧洗浄してるから、タイヤの表面はすごくキレイ。

廃タイヤを再利用したスピーカーで、ジャズを聴いてみた
ほら、キレイ!

廃タイヤを再利用したスピーカーで、ジャズを聴いてみた
こちらは、高圧洗浄前。現役感、ハンパないですね!


また専用スタンドがあるので、床に直接触れることもありません。


廃タイヤを再利用したスピーカーで、ジャズを聴いてみた


それでいて、タイヤがタイヤとして活躍していた頃の名残もあえて残してあるのがニクい。表面の溝部分に小石が挟まったままだったり、所々が磨り減っていたり。
「スピーカーは一つ一つメーカーが違うので、スタッドレスの柄もそれぞれ全然違います」(堀池さん)
通なユーザーからは、「あのメーカーのタイヤで欲しいんだけど」とリクエストを受けることもあるとのこと。

この『SEALスピーカー』、価格は51,840円(税込)です。現在、受注生産商品となっている模様。
「主に法人、特に車ディーラー等の店舗さんによる購入が多いです。2台購入され、それぞれを店内端に置いてご使用されるケースもあるみたいですよ」(堀池さん)
スピーカーのサイズは、W525×H525×D200mm。この大きさのタイヤが、最も廃棄される数が多いんです。

そして、新展開について。
「もう一回り小さいサイズも商品化してみたいんですよね。どうしても現状サイズは、ご家庭だと大き過ぎるので。一人暮らしの男性でも使い勝手がいいようなものを……」(堀池さん)
そのサイズのタイヤが量産化できるほど廃棄されているかが条件になるものの、ユーザーとしては期待したい。自宅内、違った意味でタイヤが大稼働するかもしれない!?
(寺西ジャジューカ)