猫というとどんなイメージをお持ちだろうか。誰の指図も受けず悠々と過ごし、スレンダーな体に優雅な身のこなしで細い壁の上を音もなく歩く、そんなイメージが一般的なように思う。
しかし、違う猫もいるのだ。
わが家の中島らもーんさん(6才・メス)は、ご飯を大量に与えたわけでもなく甘やかしすぎたわけでもないが、気づいたら7キロ近い体重になっていた。歩くその姿は相撲取り、走ると猫なのに馬のような「パカラッパカラッパカラッ」をいった音がするし、猫じゃらしを振っても寝たままじゃれるといった体たらくだ。
6キロ以上に成長した"巨猫"、思わずそのモフモフお腹に顔をうずめたくなる!
中島らもーんさん(メス・6才)

わが家の猫がそうなったからか、いつからか大きいサイズの猫に妙に魅力を感じるようになってしまった。野良さんであろうと、猫カフェの猫であろうと大きい猫をみると「むふーっ」と鼻息がついつい荒くなってしまう。ああ、あのおなかに顔をうずめて思いっきりモフモフしたいっ! となってしまうのだ。


そんな変な趣向を持った人は私だけかと思っていたが、先日、『巨猫団』なる本を発見してしまった。本になるほどそんな趣向の人が……? と思い早速購入。
6キロ以上に成長した"巨猫"、思わずそのモフモフお腹に顔をうずめたくなる!
『巨猫団』えゐち(著)/幻冬舎

この書籍は、巨猫の定義に当てはまる猫を巨猫主さんたちからFacebookページなどに投稿してもらい、「うわー! これは巨猫だわー!」という猫さん写真を著者のえゐちさんが選び、それらをまとめて一冊にしたものである。

書籍によると巨猫の定義は「意図・作為なく6キロ以上に成長した猫」になるそうだ。6キロ……。抱いたことのある方は分かると思うが、そんじょそこらの新生児よりだいぶ重い。
下手したら中型犬くらいあるが、その重みと存在感がまた愛おしさを倍増させる。(経験談)

書籍には、写真では伝えづらい大きさを表すために一升瓶と一緒に写っている巨猫写真の特集があるが、だいたいの猫が一升瓶よりも大きい! また、小さな箱の形を変形させながらメリメリと入りそのまま寝ている様子や、頑張っても閉じない前脚、乗っているキーボードがメキメキ割れそうな状態でノートパソコンを覗き込んでいる様など、見れば見るほどニヤニヤするくらいに本気で和んでしまう。

そもそも、どのようにこの巨猫団は発足したのだろうか。書籍によると、日常を綴ったブログでいい意味での存在感を放つ巨猫たちがおり、そんなブログを見たりしているうちに「ちょっとオタクも結構アレじゃなくて? オホホ」やら「あらまぁそういうオタクも結構アレね? ウフフ」と大きな猫たちを愛であう交流が生まれたことがきっかけらしい。そんなきっかけもまた和むなぁとほっこりしてしまった。

しかし、和んでばかりもいられない。
体躯の大きな猫は健康状態が気になる。私も、わが家のらもーんさんの体調には敏感になっている。特に太らせたわけではないが、一般的な猫より体躯が大きいのは事実なので、健康を気遣いダイエットフードを与え、たまに(無理やり)運動もさせている。そして巨猫主さんたちも無理に太らせたわけではないのだが、もちろん大切な猫たちの健康を気遣っているらしい。

が、ダイエットフードを与えても運動をさせても、霞を食って太っているのか!? と疑いたくなるほど猫たちは勝手に巨猫になっていく。そんななか、観察を続けた著者のえゐちさんは子猫のうちに以下の特徴に当てはまる場合、巨猫になる確率が高いことに気づいたそうだ。


・顔の大きさに比べて耳が大きい
・体と比較して手足が太く長い
・手足の肉球(手先)部分が大きい

……確かに! わが家のらもーんさんも子猫のとき、やたらと耳が大きい子だなぁと思っていたことを思い出した。また最近、子猫を保護し一時的に世話をしていたのだが、その子も耳が大きく手足が長い子だったので将来巨猫になりそうだなぁと思いつつ、里親様にお願いしたので結果をいつか教えてもらう予定だ。確実ではないが可能性はかなりあると思うので、もし将来、体躯の大きい猫さんになってほしい! と思う方がいたらぜひ参考にしていただきたい。
6キロ以上に成長した"巨猫"、思わずそのモフモフお腹に顔をうずめたくなる!
一時お世話をしていた巨猫になりそうな子猫、太郎(仮)さん・推定二カ月

巨猫主さんたちは、のんびりと巨猫さんたちと生活を共にし、のっそり歩いているその様や高いところに登ろうとして失敗しごまかしている様子をみて、こっそり微笑んだりこっそり爆笑しているのだが、その微笑ましい生活の一部がこの書籍からは垣間見ることができる。

猫はそれぞれにかわいく、それぞれに性格もあるが一度この書籍を見ていただければそのビッグでファットなワガママボディに夢中になってしまうこと請け合いだ。そして、猫と一緒に暮らすっていいなぁと、少しでも思っていただければこんなにうれしいことはない。

(梶原みのり/boox)