浮世絵は江戸時代に発達した版画絵のことで、当代の風俗を描いたものだが、21世紀の現代社会を描いたユニークな浮世絵が話題となっている。まずは現物をご覧頂こう。


●冬至老神(とうじろうしん)
「うろ覚え浮世絵」の世界~あのアイドルも、あの掃除機も浮世絵に!

「冬至老人は、冬至の頃に来る神である。赤い衣をまとい、大袋を担いでいて、大鹿に乗って門々を訪れては福を授ける……」(口語訳)

まさに、サンタクロースではないか!

●見立弁当
「うろ覚え浮世絵」の世界~あのアイドルも、あの掃除機も浮世絵に!

「見立弁当というものがある。これは食材を工夫して、人や動物に見立てて作る弁当である。これは特に子供に喜ばれる。また、これがあまりに流行したために、子供や夫のためでなく、自らの腕を示すために弁当を作る婦人もあるそうである……」(口語訳)

まさにキャラ弁!

●屑吸桶(くずすいおけ)
「うろ覚え浮世絵」の世界~あのアイドルも、あの掃除機も浮世絵に!

「屑吸桶は、屑を吸ってくれる桶である。径は一尺ほどである。
これがあれば掃除の必要はない。勝手に屑のある場所に滑って行き、吸い取ってくれる……」(口語訳)

まさに、あの掃除機!

●女芝居四十七
「うろ覚え浮世絵」の世界~あのアイドルも、あの掃除機も浮世絵に!

「興行主は、これはという見目麗しい女性を集めて芝居を打ち、歌や踊りを見せるため、男たちに大人気である。その中で、特に人気があるのが四十七士を女で演じるものである……」(口語訳)

と、これらの絵も文章も全て「洞田創研究室」の洞田創(とだはじめ)さんが描いたもの。そんな浮世絵を約60点も掲載した『平成うろ覚え草子』が発売された。(洞田創著:飛鳥新社刊)※本記事では作者・出版社の許可を得て著書『平成うろ覚え草紙』より一部引用してあります。

江戸時代の絵師が現代にタイムスリップ。
平成の風俗を見聞きし、江戸時代に戻ってそれを描いたというもの。ただし、過去に戻る時に頭を打ってしまって、記憶はかなりいい加減なもの、つまりうろ覚えになっている……ということになっている。

実は洞田さんが描いた絵は、およそ2年前からネット上で話題になっていた。
『【大発見】江戸時代の腐女子見つけたったwwwww』……というテーマの絵が公開された時のことだった。
「うろ覚え浮世絵」の世界~あのアイドルも、あの掃除機も浮世絵に!

この絵を見た人から
「これって、もしかして本当にあったもの?」という声が相次ぎ、洞田さん自ら「作者です。これは私が描いたウソのものです。
すみません」と訂正する始末に。

非常に真面目で内気な洞田さん。和風の作品、特に人文学の知識に基づいた「本物のような」浮世絵調のものを得意としており、pixivなどで発表している「元ネタ見つけたシリーズ」はネタ好きユーザーに人気が高い。少々、ミステリアスな部分もあり、そんなところにも作家としての魅力を感じる。では、最後に洞田さん本人から一言。
「まるごと一冊、偽書を作りました。
『平成うろ覚え草紙』楽しんでいただけると幸いです」

ちなみに、こちらの絵も……
「うろ覚え浮世絵」の世界~あのアイドルも、あの掃除機も浮世絵に!

『明治時代に、ぐりとぐらみつけたっwwwww』
もはや、説明は不要かと……。※こちらは書籍には掲載されておりません。

浮世絵といえば、歌川国芳の浮世絵にスカイツリーらしきものが描かれていることが話題になったが、国芳もタイムスリップして描いていたらロマンティックだな……と思った秋の夕暮れなのでした。
(取材・文/やきそばかおる)

『平成うろ覚え草紙』(洞田創著:飛鳥新社刊)
2014年9月24日(水曜)発売。約60点収録のネタ浮世絵があなたの常識を破壊!
「うろ覚え浮世絵」の世界~あのアイドルも、あの掃除機も浮世絵に!

「洞田創研究室」サイト