猫が好きな人なら、見ているだけでキュンとくる飛び猫写真。各地で飛び猫の写真を撮り続け、フェイスブックで公開している写真も人気の動物写真家、五十嵐健太さんに撮り方を聞いてみました。


まずは挨拶がわりに、五十嵐さんが撮影したとっておきの写真を数点紹介。
一度は撮りたい"飛び猫"写真の撮り方をFBで人気の五十嵐さんに聞いてみた

一度は撮りたい"飛び猫"写真の撮り方をFBで人気の五十嵐さんに聞いてみた

一度は撮りたい"飛び猫"写真の撮り方をFBで人気の五十嵐さんに聞いてみた

五十嵐さんが撮影した飛び猫の写真は、横浜で開催された『御苗場』写真展、東京ビッグサイトで開催された『デザインフェスタ』等でも公開されており、2015年用のカレンダー等にも採用が決まっている。ちなみに、飛び猫の写真以外にも、さまざまなバージョンの猫の写真を10万枚以上も撮影しているとのこと。
一度は撮りたい"飛び猫"写真の撮り方をFBで人気の五十嵐さんに聞いてみた

――この猫のジャンプ力は、とりわけすごいですね!
「この猫は、千葉の某所で遭遇して撮影しました。日中は日当たりの良い船の上で寝るのが好きな子です。夕方になると陸地に戻るために、船と船の間を飛びます。
とても距離があって、落ちたら危ないのですがそこを飛んでしまうところがとても可愛いです」

最初に見つけてから撮影するまでに、3日間もかかったそうだ。しかも、天候不良などで行かなかった日も含めると1週間かかったとのこと。

「もう2度とこんなシャッターチャンスは無いと思います。さらに、この写真が海外の著名なアーティストの写真と並んで写真集に載ったときは嬉しくてたまらなかったです」

――五十嵐さんが撮影した写真は、色々なところで起用されているそうですね。
「猫以外に犬やウサギの写真なども撮っていて、株式会社マインドウェイブさんのノート、手帳、ファイルなど、学研さんの手帳表紙、アクティブコーポレーションさんのポストカード、カレンダー、カレンダーの老舗大手メーカーの株式会社トーダンさんのカレンダー、『ねこぱんち』表紙など、他にもあります。本当にありがたいです」
一度は撮りたい"飛び猫"写真の撮り方をFBで人気の五十嵐さんに聞いてみた

▲株式会社マインドウェイブのノート。
全国文具取扱店などで好評発売中。

――では、気安く聞くのは申し訳ない気がしますが、撮影のポイントやコツなどを教えてください。

1、最初に撮りたいイメージなどをしっかり固めておく。
「動物も人物写真もすべてそうですが、撮りながら考えるのではなくてなるべく最高のイメージを事前にまとめることです。うまく自然条件が揃うことは少ないですが、条件が揃ったときには良い写真が撮れます」
運任せで撮影せずに、成功イメージを想像する癖をつけたほうが上達も早いとのこと。

2、猫じゃらしを使用する。

「屋外の猫を撮影する際も、猫じゃらしなど使用すると変わった写真も撮れるので用意しておくといいと思います。草や木の枝などで代用も出来ます。猫じゃらしに反応しやすい猫やジャンプするような猫は3歳未満くらいの若い猫が多いです」
――若くない猫は?
「年をとるにつれて動きが悪くなる傾向があります」
まさに、“貫禄”といったところだろうか。

3、順光・逆光・サイド光など光の向きや角度を意識して様々なバリエーションで撮影しておく。
「同じような写真だけだと、後で作品集を作ったときなど単調な仕上がりになりますからね」

4、猫にとって有害な小道具は使わない。
「小道具を使用する時は、必ず無害なものを選んで使用します。
ゆりの花など有害な物は使用しないようにします。ちなみに、使用するのは、100円ショップや安易に手に入るものだと、すでに使用されている場合があるので使いません(子猫写真の撮影などのとき)」
このへんはアイデア勝負なのである。

さて、晴れて猫に遭遇したところで、少しでもお近づきになりたいところ。顔を見ただけで逃げられてしまっては、猫好きとしてはションボリである。

「猫に餌を与えれば確かに猫は寄ってはきますが、餌を与えないで欲しいという島もあるので気をつけてください」※一部認められている島もあるとのこと。

●飛び猫写真の撮り方・コツ

では、心構えが分かったところで、ここからは飛び猫写真の撮り方のコツを教えてもらった。


1、連写を使わない。タイミングよくシャッターを切ることが大事。
「僕はキヤノンの5dmk2や7dを使用しているのですが、これらの機種で連射に頼ると猫の良い位置がコマとコマの間に入ってしまうので、良い位置がちょうど来るようにタイムラグも計算してタイミングよく押します」

今はスマホでも連写機能が充実しているので、連写を使うと撮れそうなものだが、ベストなタイミングで撮るのは難しい。経験を積まないと難しいそうだ。

2、レンズの広角側でなるべく撮影して、F値を絞り込んで撮影してください(例、F値11など)。被写界深度を稼いでください(ピントが合って見える範囲が広がるため)。


よく、手前のモノにピントがあって、背景がボケている写真があるが、ただでさえ動きの速い飛び猫写真を撮る場合、広いところにピントを合わせるようにしてないと至難の業なのである。

3、ISO感度は気にせずに高くする。
「最近のデジタルカメラはノイズが出にくいので、ISO1600くらいまで上げても全然問題ありません」
大手カレンダーメーカーの大判カレンダーや書籍や印刷物の表紙に採用されるような写真でも、ISO感度が高くても採用されるため、気にすることはないとのこと。

ちなみに、こういった猫の写真は、望遠レンズで撮っているのかと思っていたが、実際は真逆。
「頭などを軽くなでてあげられる程度の距離感で撮影しています」
とのこと。ここまでくると、猫との接し方もプロなのである。

――いろんなアングルから撮影すると思いますが、服装はどのようにしていますか?
「寝そべって撮影したりするので、汚れても大丈夫な服装にしています。冬場はジーンズと革ジャン。夏場はジーンズとTシャツなどです。あと、夏場は虫除けスプレーなどもお勧めです」
――私も全国の動物園に行くから分かるのですが、あちらこちらに行くのって、金銭的にも結構大変ですよね。
「そうなんです。僕も離島などに行く際は夜行バスで行きます。島によってはフェリーの午前の便が早朝に出るので、航空機の早朝便ではフェリーに間に合いません。前日に現地に行ってホテルに泊まる方法もあるのですが、あまり撮影にお金がかけられないので夜行バスという選択になります。4列シートの格安便です」
――うんうん。『青春ドリーム号』とか、『キラキラ号』とか頭に浮かびます。
「瀬戸内海に行くときも、高松行きより岡山行きのほうが少し安かったりするのでそんな小さなところにも気をつけてます」

●撮影の時に気をつけたいマナー

ところで、五十嵐さんによると、このところ、猫の写真(鉄道の写真、廃墟の写真など含む)を撮影する人に関するトラブルが増えているという。
「畑や私有地、線路内での撮影などでトラブルが多いです。猫の撮影でも他人の家の庭などに勝手に入って撮影することなど、周囲に迷惑をかけないで撮影することに気をつけていただきたいです。猫の島のほとんどは観光地ではありません。地元の方にとっては観光目的の方がたくさん来てもメリットはありません」

猫の居場所をネットやメディアで具体的に書かないことも大事とのこと。その地域が有名になってしまうと、心無い人によって虐待にあってしまうことがある。最近も、とある島の猫たちが何匹も行方不明になったという悲しい出来事が起きた。
「基本的に、猫がいる場所を書かないことを推奨しています」

五十嵐さんは、もともとはウェブデザイナーになる予定で、ウェブサイト制作に必要な写真を撮るため写真を撮っていたところ、どんどん猫の写真にのめりこむようになっていったという。猫に会うために、時間を見つけては歩き回っている日々だ。同じく猫の写真を撮り続けている岩合光昭さんは、早朝は猫に会う絶好のチャンスなので「猫に会うには、早起きは必須」とおっしゃっていた。まずは、朝型に変えないと。猫に会うのもラクではない。
(やきそばかおる)
五十嵐健太氏のフェイスブックページ
五十嵐健太・サイト