その表情はなんとなく、推定年齢50代くらいのおっさんを彷彿とさせる。ちょびヒゲ&センター分け(?)の髪型を思わせる模様も、なんともいえない味がある。
一度見たら忘れられない“ぶ顔(ぶさいく顔)”猫・ヨウカンさん。
ぶさいく顔のヨウカンさん率いる『うちの猫ら』に注目

このヨウカンさんをはじめとした保護猫たちとの暮らしを、飼い主の吉松文男さん・直子さん夫妻がつづったブログが2008年に『うちの猫ら』として書籍化。その後、第二弾や関連書籍、カレンダーなども発売されるヒットコンテンツになった。特にヨウカンさんは雑誌やテレビなどさまざまなメディアに取り上げられているほか、昨年には東急線の中吊り広告にも登場。ブログ本は中国語版(『猫星人attack!1&2』)まで発行され、海の向こうでもぶ顔の魅力がジワジワと浸透しているらしい。

そんなヨウカンさんファミリーの約5年ぶりとなるブログ本『うちの猫ら3』(オークラ出版/1500円税抜)が、現在好評発売中だ。
この5年間の、赤ちゃんからご隠居猫までのべ15匹(現在は8匹)とのにぎやかな生活のあれこれを、味わい深い写真満載で紹介している。
ぶさいく顔のヨウカンさん率いる『うちの猫ら』に注目

人間の食事時に食卓ににじり寄ってくる通称“はらへりーず”など、1匹ずつ個性あふれるにゃんこたちの表情や行動を切り取ったり、飽きの来ないヨウカンさんの「ぶ顔コレクション」、それぞれの小さい頃と現在を“ビフォーアフター”的に比較する「この子が、こうなった!」など、コンテンツもいろいろ。

広告制作やウェブデザインを本業とする文男さんが構成や編集、デザインを、あと書きを直子さん、本の中に出てくるイラストは長女のかすみさんが担当。本の随所に画家のヒグチユウコさんら、吉松さんご夫妻と親交の深いアーティストたちによる『うちの猫ら』をテーマにした作品が登場しているのもポイントだ。この本やブログについてはもちろん、味わい深いペット写真の撮り方などについて文男さんにお話をうかがった。

そもそも、猫たちとの暮らしをテーマにしたブログを始めたきっかけは何だったのだろう?
「ブログを始めたのは今から10年前。
仕事柄、これからはきっとHPよりブログが主流になると思い、いろいろ試した結果、エキサイトブログで始めました。最初は、気になったモノやコトをなんでも書いていたんですけど、猫のことを書いた時の方が見て下さる方々の反応がよく、徐々に猫中心になってしまいました(笑)」

お座りポーズや寝顔などのかわいい猫写真は世にあふれている。しかし動いているにゃんこが一瞬見せる、人間くさい表情やおもしろポーズなどを逃さずおさえるのは至難の業。決定的な瞬間をおさえるコツなどはあるのだろうか?
「クリッピングストロボを使って、カメラのシャッター速度優先モード(TV)で1/180秒と速めに設定しています。その状態でササミやマタタビをちらつかせて、立ち上がった瞬間を狙って撮っていますね。あとは、毛繕い中とかも瞬間を切り取るとスゴい顔が撮れます。
ですが、一発撮りのため、失敗写真もかなり多いんです。枚数を撮っていれば、何枚かに1枚“これは!”と思える写真が撮れるものだと思います」

ちなみに、ブログ本の第二弾が出てから今作までの間に撮り貯めた写真は、なんと約10万枚(!)。「出来るだけ初出しの写真を多くしたかったので、せっかく良い写真が撮れたにもかかわらず、ブログに載せることができないジレンマがありました」と文男さん。味わい深い写真コレクションの中でも、特にお気に入りなのがAmazon限定版の表紙になっている“文豪風ポーズ”のヨウカンさんとのこと。
「毛繕いしている時に撮ったうちの1枚。何か考えてそうで、何も考えてないって顔してます。
それと、P69に掲載しているプー(プリン)ちゃんの“ぶ顔”ですね。これも毛づくろい中のひとコマですが、目がいっちゃってます」
ぶさいく顔のヨウカンさん率いる『うちの猫ら』に注目

ちなみに、これまでの書籍が海外でも発売されていたり、Instagramでもヨウカンさんを中心にした画像コレクションを公開中ということで、海外の読者やファンの反応はどうなのだろうか?
「Instagramのフォロワーさんは世界中で45000人を超えていて、半分以上が外国の方です。“イイね”は、だいたい平均して2000前後、最高は(弟猫の)おかきの子供の頃の写真で、8974もありました。寄せられるコメントは英語、中国語(簡体字)、台湾語(繁体字)、ロシア語、タイ語、アラビア語など世界各国から……意味は良くわからないのですが、いただいております。英語では、『ADORABLE』『So cute!』などなど。台湾や中国では、ヨウカンさんは360°どこから見ても不細工な猫という扱いになっているようです(笑)」
ぶさいく顔のヨウカンさん率いる『うちの猫ら』に注目

本にはたくさんの楽しい写真が収められているが、編集中の今年3月には残念なことに、プリンちゃん(2001年に保護)が体調を崩して天国に旅立ってしまった。
ブログやTwitter(@kachimo)などにも多数の追悼コメントが寄せられており、本のあと書きにもプリンちゃんの愛らしい写真をはじめ、次女の「ち」さんによる力作イラストが添えられている。生き物と暮らせば、必ずやってくるお別れのとき。プリンちゃんは吉松さん一家はもちろん、たくさんのファンからの愛情をいっぱいに受けて見送られたのではないかと思う。最後に、『うちの猫ら』読者へのメッセージをお願いした。

「2004年6月16日にブログ『ぶつぶつ独り言2(うちの猫ら)』を始めて、今年で丸10年。
よく続いたものです。

始めた頃は猫も6匹でしたが、瞬間最高12匹。出たり入ったりで、のべ15匹。
今年の3月10日にプーちゃんが亡くなって、今は、8匹。
猫にまみれ、猫に助けられた10年でした。
皆様のおかげでここまで続けてこられました。
ありがとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします」

これからも20年、いや30年(?)、猫まみれの楽しいブログを続けてもらいたい!と、世の“ネコスキー”たちは切に願っております。
(古知屋ジュン)