一見すると『最後の晩餐』(レオナルド・ダ・ヴィンチ)。だが、実は描いたものではなく、マスキングテープを細かくちぎって貼ったマスキングテープアートだ。
大きさはタタミ一畳分にもなる。つくりあげたのは、武蔵野美術大学造形学部の船原七紗さん。たくさんの種類のマスキングテープを使用しており、さぞかし大変だったのではないかと思い、制作秘話を伺ってきた。(船原さんはコネタのインタビューが、メディア初登場!)

――マスキングテープは、何種類くらい持ってますか?
「450種類くらいはあります」
――450種類!?
「使えそうな色や柄を発見すると、ついつい買ってしまうんです」

元々、マスキングテープが好きでたくさん持っていたという船原さん。大学で、雑誌を作る課題が出た時に、表紙の絵をどうしようと悩んだ結果、写真でもなく、油絵でもなく、マスキングテープで絵をつくりあげることにしたという。絵の中でマスキングテープを使う人はいるが、マスキングテープだけで繊細な絵をつくりあげるのは珍しい。
学園祭等で展示したところ、『すごい!』という反響があり、大喜びだったという。

――下描きはしますか?
「ほとんどしません。軽く輪郭をとるくらいです」
そう、天才なので下描きをしないのである。下描きをしてもうまく描けそうにない我々凡人は、「すごいですね~」とひたすら感心するしかないのだ。(もちろん、何も見ないのではなく、写真や絵を見ながらつくりあげていくそうです)

船原さんは、完成形を頭の中で描きつつ、段ボールパネルにマスキングテープをちぎっては貼っていく。
――やはり、ハサミは使わずにちぎるんですか?
「切った方が形は綺麗ですが、ちぎった方が味が出ますね」

――どの部分から取り組んでいくんですか?
「細かい部分からやっていきますので、まずは顔ですね。
細かい作業に疲れた時は、広い“画面”の部分を貼っていきます。交互にやっていくのがいいですね」
顔の部分のように、特に繊細なところは爪の先を使って形を整えることもあるそうだ。

制作にかかる時間は、A4サイズなら1日の間で完成するが、タタミ1畳分の大きさの『最後の晩餐』は1週間ほどかかったという。

――つくりあげていく間は、黙々と貼っていくんですか?
「余裕がある時は、音楽を流したり、テレビをつけてたりします。Linked HorizonのRevoさんの曲が好きで、よく聴きながらマスキングテープを貼ってますね。そもそも、アニメやゲーム系が好きなので、今朝も『キルラキル KILL la KILL』を観てましたし、新海誠監督の『星を追う子ども』も好きです。
背景がとにかく綺麗なんです。CMも出がけてらっしゃって、新海監督の作品は気になって観てしまいます」

船原さんは大学では油絵を専攻している。コイが好きで、作品にもコイが描かれていることが多い。しかも、非常に鮮やかな色のコイである。(PCの方は、関連写真参照)。マスキングテープアートも、鮮やかな色のテープを多く使っており、どこかポップだ。


「カワイイものを集めるのが好きで、私の部屋はカワイイものに囲まれていました。あと、父がパソコンを持っていたので、小さな頃からパソコンでお絵かきをしてましたね」

そうか。
クレヨンとか色鉛筆がメインだった昭和っ子からすると、なんとも羨ましい話である。
パソコンでのお絵かきなら間違えてもすぐに消せるけど、クレヨンは間違えたら一貫の終わり。色鉛筆も消しにくいから、砂消しでゴシゴシ消して、たまに紙がバリッと破れていた時代とはワケが違うのである。いやいや、コネタの記事とはいえ、心の中でつぶやいている場合ではない。


――気になる人はいらっしゃいますか?
「油絵でいうと、尊敬するのは、(お亡くなりになってますが)、ベクシンスキーさん。マスキングテープでは、人物ではなく『mt』さんが気になります。マスキングテープの工場見学を実施してるのですが、なかなか行く機会がなくて・・・」

今後は、重ねていくと色が変わっていくマスキングテープがあったらいいな~という船原さん。現在は就職活動中だが、マスキングテープアートは今後もつくっていきたいとのことだ。

ところで、お会いした時から気になっていたことがあったので、ここでこの質問を・・・。
――船原さんの下のお名前は「七紗」と書いて「ななさ」ではなく、「なさ」だそうですが、変わったお名前ですね!
「両親が二人共、宇宙関係の仕事をしていたんです。
私の誕生日の前日に毛利衛さんが『スペースシャトルエンデバー』で宇宙に行かれたんです。そのことも記念して、『ナサ』と命名したみたいです」

ひょえ~~!
ちなみに、妹さんも宇宙に関係のある名前なのだそうだ。スケールの大きな名前の船原さんは、今後もスケールの大きな作品をつくって、色々なところで展示されることを夢見ている。(エキサイトニュース コネタ編集部)

●船原七紗さんの作品はloftwork.comでも観られます。