パソコンを使っていて、「最近、パフォーマンス落ちたなぁ」と感じたとき、どうしていますか。知っている人は、「これはHDD(ハードディスク・ドライブ)内のデータ断片化が原因だ」と判断し、Windowsのシステムツール内にあるディスクデフラグという機能を使ってパフォーマンスを取り戻す。
だが、ちょっと気になる指摘をあるパソコンの雑学本で発見した。それは、「デフラグを頻繁にやるとHDDの寿命を縮めることになる」と。これは聞き捨てならないぞ!

HDDとはご存知のようにパソコン内のデータを記憶する装置で、つまりこれが壊れるとパソコンがHDDから起動しなくなるうえ、データが消失してしまうという最悪事態となる。そこで、デフラグのやり過ぎがHDD寿命に関係するのか、PCパーツ販売会社のリンクスインターナショナルに聞いてみた。

まず、データ断片化とは何か。
「高速で回転する磁性体の円盤に磁気ヘッドによってデータの読み込み、書き込みを行うHDDは、長時間使用することでデータが点在して記録される断片化(フラグメント)が発生します。
この断片化が発生することで、本来はある特定の部分だけにアクセスすれば済むデータも、異なるブロックにアクセスを行う必要があるため、結果としてデータ転送速度が低下します」

では、デフラグとは。
「そこで、その点在したデータを集めてHDD内を整理するのがデフラグです。デフラグによって点在したデータを集約、データ転送に関わる無駄なアクセスを防止してHDD本来の速度を発揮できるようになります。このデフラグを実行する頻度は、個々の使用環境によって変化すると思いますが、概ね半年に1回程度デフラグを実行すれば十分だと言えます」

デフラグはHDDの寿命を縮めるのか。
「デフラグ自体も基本的には断片化したデータの読み込み、最適な位置への移動書込みといった処理を行っており、HDD領域全体に連続的な負荷を要求します。そのため、HDDの相対的な寿命を縮める可能性があります」
『概ね半年に1回程度』のルールを守ることがHDDの寿命を縮めないポイントというわけだ。


なお付け加えると、HDDが壊れる最大の要因は“動作環境温度の上昇”だという。
「磁性体の円盤は一般的に毎分5000~1万回転する製品があり、HDDメーカーが想定する動作範囲温度から大きく離れた環境下で使用すると、HDDの故障率は急激に高くなります」
故障を起こす原因はそれだけではない。
「HDDは非常に精密な機器です。動作中の振動や衝撃に弱く磁性体の円盤と磁気ヘッドの接触、磁気ヘッドの制御モーターなどの不良により、俗にいう“クラッシュ”を引き起こします」
「現在はクラッシュしたHDDでもデータが復旧可能な場合がありますが、非常に高価なサービスになっています」
うーん、HDDって意外にデリケートなのだなぁ。大事に扱わなくては!

ところで、最近普及しているHDDに代わる記憶装置であるSSDもデータが断片化するのか。
「SSDにも一定のデフラグ効果がありますが、HDDのそれとは異なる“空き容量域のデフラグ”が必要です。
空き容量域のデフラグに対応したソフトウェアを使用することで、データ転送速度の低下を防ぐことができます。SSDのデフラグも方法は異なりますが、基本的にはデータの集約、整理によって無駄なアクセスを防止させています」

で、やっぱりディスクデフラグのやりすぎの弊害はあるのか。
「はい、SSDの特性上、データを保存しているNANDチップ(半導体)には書き換え回数の制限、つまり寿命が存在しているため、無作為なデフラグはHDD同様に寿命を縮める可能性があります。なので、SSDのデフラグに関しても、概ね半年に1回程度実行すれば十分だと言えます」

HDDもSSDも、ちゃんと使用上のルールを守らないと貴重なデータ消失が起る危険があるというわけ。注意しよう!
(羽石竜示)

※特記事項
HDDは仕様、状況、その他の環境によって寿命が大きく左右されます。また、記事内容は特定のHDDメーカーに関係していません。
リンクスインターナショナルはHDD製品の取り扱いをしておらず、特定のHDDメーカーから特別な情報協力等は受けていない、同社独自の見解となります。