マルタにはキニーという独自の飲物がある。マルタ版コーラとも呼ばれ、地元の人はもちろんのこと観光客にも人気の商品だ。
コーラと言っても独特の味で、そのオリジナリティゆえに現地で熱狂的なファンを生み出しているという。どんな飲料なのか。

キニーが生まれたのは第2次大戦後の1952年。当時、激増したコーラに代わる飲料として、その数年前からマルタのご当地ビール「チスク」を製造していたシモンズ・ファーソンズ・チスク社によって作られた。今では通常のキニーに加え、ダイエットキニー(1984年から)やオレンジのフレーバーを強めたキニーゼスト(2007年から)も売られている。そこでキニーとキニーゼストの2つを飲んで、マルタ人がハマるという味を確かめてみた。


まず色はどちらも琥珀色でコーラに近い。しかし味はコーラのイメージと少々異なり、苦めのオレンジと様々なハーブを混ぜたような風味を持っている。炭酸はコカコーラやペプシコーラと比べて軽い。これがキニー各商品に共通する味だ。

キニーとキニーゼストを比べてみると、色はキニーゼストが濃く味も甘い。キニーは硬め、キニーゼストは柔らかめの印象を受けた(ちなみにダイエットキニーは人工甘味料の甘みを強く感じた)。
どちらも、地中海の島国マルタの飲物らしく、暑い気候にとてもよく合う仕上がりになっている。

シモンズ・ファーソンズ・チスク社によれば、キニーはアルコールとの相性も良いそうだ。例えばホワイトラムとオレンジキュラソー、トリプル・セックに氷を加えてかき回し、トップにキニーとレモン、マラスキーノ・チェリーを加えれば、その名も「ビ・キニー」の完成。夏にぴったりのカクテルができ上がる。

マルタ独自の飲料と言っても、最近はマルタ国外でも売られており、英国、イタリア、ドイツ、オランダ、スイス、オーストリア、ロシア、アルバニア、リビア、カナダ、オーストラリアでキニーを手にすることができる。しかし、残念ながら日本では取り扱われておらず、現時点ではマルタへ行くか販売されている国で買うかしか手はない、幻の飲物の一つになっている。

(加藤亨延)