先日、ママ友がこんなことを言ってきた。
「この前さあ、食器用洗剤の裏の表示を見て驚いちゃった。
野菜や果物も洗えるって書いてあったんだよ。知ってた?」

聞いていた3人のママはみな一様に首を横に振った。「洗剤で野菜を洗うなんて、料理が苦手な人か異国の話かと思った」とひとりのママ。そもそも、野菜や果物を洗剤で洗うという発想をみな持っていなかったのだ。

ところが後日、実際に近所のスーパーで食器用洗剤をチェックしてビックリ。すべてではないが、たしかにいくつかのメーカーの商品の用途欄に「野菜・果物」の記載があったのだ。


野菜や果物を洗える食器用洗剤のひとつ、「キュキュット」や「ファミリー」ブランドを展開する花王の担当者に話を聞いた。野菜や果物が洗える洗剤と洗えない洗剤の違いは?
「野菜や果物を洗えるかどうかの表示は、食品衛生法に準じます」

食品衛生法では、野菜・果物洗い用洗剤に対して、成分規格と使用法(使用基準)が述べられている。成分規格とは具体的には、「ヒ素や重金属、メタノールなどを含まないこと」、「中性であること」、「酵素や漂白剤を含まないこと」など。

「条件のいずれかを満たさなければ、法律上、野菜・果物は洗えないという扱いになりますが、だからといって、そうした商品が安全性上に問題であるわけではありません」

ちなみに使用法としては、「洗浄剤溶液に5分以上浸け置いてはならない」「流水ならば30秒以上すすぐこと」「溜め水ならば、2回以上水をかえてすすぐこと」などが決められているという。

それにしても、なぜこんな基準があるのだろうか?
「食品衛生法が制定された時代背景に絡んでいます。戦争が終わって間もない頃だったので、回虫の卵や農薬が野菜や果物に付着していることを想定したものです」

昨今では、このような懸念そのものがなくなってしまっているので、消費者実態も変化しているが、改良を重ねても、安心して使ってもらうために、野菜・果物を洗えるという品質は担保してきた同社。
現在では実生活ではあまり出番のない用途かもしれないが、興味があれば試してみては?
(古屋江美子)