いよいよ冬本番。つめたい北風に冷やされた日は、ピリ辛食材で芯からぽかぽかになりたいもの。
冷え込みの厳しさで知られる新潟には、体を温めてくれるすてきな調味料があるらしい。

それは、新潟で昔から知られる“かんずり”と呼ばれる調味料。これがなかなか一手間かかっているのである。
そんなかんずりの作り方を、有限会社かんずりさんに伺ってみた。

まず原料となるのが、地元産かんずり用トウガラシ。自然交配されたもので辛すぎず甘すぎず、かんずり作りにピッタリなのだそう。
9月頃に収穫されたあと、まずは天然塩で塩漬けを行う。
じっくり眠らせたトウガラシを取り出すのは1月、雪が積もる大寒のころ。真っ白な雪が積もったら、その上に塩漬けされたトウガラシを広げてさらす。こうする事でトウガラシのアクが吸い取られ甘味が増すのだそう。

ここまででやっと下準備終了。雪さらしを終えたトウガラシを柚子、米糀、塩と一緒に仕込む。
これで完成かと思いきや、年に一度空気を入れて発酵を促しつつ、足かけ4年。最後の最後。初雪が降り始めるころ、寒さによって味を引き締める”寒ざらし”の工程を経て、ようやくかんずりは完成する。
見た目は真っ赤。しかし丁寧にアク抜きを施しているので、辛い中にも甘みのある不思議な味わいに変化するそうだ。

そもそもこのかんずり、とても古い歴史を持つそう。

「古くは戦国時代にこの地に唐辛子が伝わり、冬の保存食・夏のスタミナ源として、各家庭で作られていたと言われています。会社としては、昭和41年に創業です」
と、有限会社かんずりさんは言う。
しかし新潟の全地方で食べられている、というわけでもないらしい。
「新潟でも特に上越地域は、高い確率で常備されていると思いますが、中越・下越地域ではどの家庭も……とまではいきません」
各地域ごと香辛料を村興し的に作り始めているので、その地域の香辛料を愛用する傾向にあるそう。
「ただ、“かんずり”と聞いて知らない方は少ないと思います」
と、新潟を代表する調味料であることは間違いない。

食べ方は調味料としてラーメンや納豆に入れたり、焼き魚に直接つけて、お刺身のワサビ代わり、カレーに入れたり……と、使い勝手もばつぐん。

これからの時期は、さんま、お鍋、煮込みうどんなど、暖かい食材にたっぷり使えば体もぽかぽかになりそう。

新潟はご存じ、豪雪地帯である。
体を芯からあたためてくれる食材を生み出すために、冷たい雪が必要。というのがとても不思議だが、今も昔も新潟の食卓を彩る調味料“かんずり”。

これからはどんどん冷えていく毎日だ。寒い時期だからこそおいしいお鍋やあつあつの煮込みうどんに、こんな赤い一滴を加えて体を温めてみては。

(のなかなおみ)