レストランなどでハンバーグセットやステーキセットといった洋食を注文すると、ライスが皿に盛られて出てくる場合が多い。茶碗と箸で食べてもライスであることに変わりはないのだが、皿のライスをフォークで食べると、“いかにも洋食”な気分を味わうことができる。


ところで、この皿に盛られたライスとフォーク。読者の皆さんは、どのようにして食されているだろうか。レストランなどで食事中の客を見るにつけ、多くはフォークの腹の部分にライスを乗せて食べているように思われる。

しかし、フォークの背の部分にライスを乗せて食べている客も時折見受けられる。普段、フォークの腹にライスを乗せて食べる筆者としては、フォークの背に乗せると食べづらいのでは、と思ってしまう(背に乗せて食べるのが当たり前の人にしてみたら、腹の方が食べづらいのかもしれないが)。そしてまた、洋食のマナーとしてフォークの腹と背、どちらに乗せて食べるのが正しいのか、ふと疑問にも思った。


そこで、まずはマナーに関して調べてみた。すると、皿に盛られた洋食形式のライスの正しい食べ方は「特に無し」であることが判明した。そもそも、欧米ではライスは主食ではなく、野菜の一種。日本のレストランのように、皿にたっぷりと盛られたライスを食べる習慣が欧米にはない。日本独自の食べ方であるがゆえに、決まったマナーは特に無し、というわけである。

ただ、ひと昔前まではフォークの背にライスを乗せて食べることが正しいマナーである、という認識が日本人の間に広く持たれていたようだ。
なるほど、たしかに最近のレストランでフォークの背に乗せて食べる客は、年配の人が多いように思われる。以前まで定着していたマナーが身についている世代といえよう。

さらに調べてみると、フォークの背を利用した食べ方は、イギリス式のテーブルマナーであることがわかった。このマナーが、明治時代の日本の上流階級や、西洋文化を国内に伝える架け橋となった日本海軍が手本としたことで、日本人の間で洋食のマナーとして広く普及したといわれている。

洋食のライスの食べ方に正式なマナーが無いということは、フォークの背でも腹でも自由に使って食べれば良い、ということになる。要は、美味しく、かつキレイに食べられればOKということだ。
ただ、このまま時代が進めば、フォークの背でライスを食べる人が皆無となってしまうかもしれない。日本独自のこの食べ方。若い読者の皆さん、今度洋食を食べる際にでも試してみてはいかがだろう。
(木村吉貴/studio woofoo)