いじめっ子キャラとして認知されている、『ドラえもん』におけるジャイアンの立ち位置。
しかし彼の性根が優しいということは、日本中でバレバレではないだろうか。
だからこそ、憎み切れない。それどころか、ジャイアンのファンは意外と多いように思う。ヒールになりきれない人の良さが、彼から透けて見えるから。

そんなジャイアン・ファンに向け、待望のアイテムが製作された。株式会社エンスカイが7月より発売しているのは、『ジャイアン猛言トランプ』(税込み840円)。
このトランプでは、記憶に残る多くの“ジャイアン名場面”の中から選りすぐりを厳選。
それらを、トランプの絵柄にしてみせているのだ。たとえば、かの有名な「おまえのものはおれのもの、おれのものもおれのもの」という名ゼリフは、スペードの6に掲載されている。

まるで“ジャイアン格言集”のような性格も兼ね備えている、この新トランプ。そこで、このアイテムの開発のきっかけについてを同社に伺ってみた。
「以前より、ジャイアンの熱くて深いセリフや、彼の独特の哲学を愛するコアなファンがいることは知っていました。そこで、ライトユーザーの方にも手に取りやすいアイテムとして、”トランプ“に暴言の数々を散りばめたら面白い物が作れるのではないか、というのが開発の始まりでした」(同社・担当者)

たしかに、彼の独特の哲学には魅かれるものがある。
それらが網羅されたトランプの中から、担当者が個人的なお気に入りとして挙げたのは「ハートのK」と「クローバーの6」。この二枚が、また両極端なのだ。同一人物とは思えない、あまりにもな振り幅を感じさせてくれる。
「ハートのK」では、涙を流しながらドラえもんとのび太に駆け寄るジャイアンの姿を紹介。掲載されているセリフは「ありがとよ! おまえたちはおれの心の友だ、親友だ!」という、泣かせるものだ。
一方、「クローバーの6」では「いつかえさなかった!? えいきゅうにかりておくだけだぞ」とスネ夫に詰め寄る、傍若無人なジャイアンが登場。


この多面性も、ジャイアンの魅力の一つだろうか。そこで今回のトランプでは、ジャイアンの行動をわかりやすくカテゴリー分けしている。
まず、スペードでは“ジャイアニズム”を押し付けて凄むジャイアンの姿でまとめてみせた。ハートのトランプは、「心の友よ」という言葉を色々な使用法で用いるジャイアンの姿だけを厳選。ダイヤでは、格好いいセリフを含む男前のジャイアンを紹介している。クローバーは、凄まじい勢いを見せる怒濤のジャイアンを掲載。


それにしても、単純に計算して50以上のジャイアンがこのトランプで紹介されているワケだ。もう、チョイスするだけで大変だったのではないだろうか?
「コミックスはもちろん、たくさんの資料を読み漁り、選出致しました。面白いセリフはたくさんありましたが、一コマで通じる面白さも条件に入れていたため、惜しくも網羅できなかったものもあります」(担当者)
トランプに描かれるイラストは、全てを描き起こしたという。何気に手間がかかっている。愛情がないと、できない仕事だな……。

そして、このトランプは裏面も見逃せない。
パッとめくると、そこには「剛田武」(ジャイアンの本名)のサインが印刷されているのだ。思わず、リサイタルに参加したくなるではないか。
また、ジョーカー札には「ホゲエ~」と美声(?)を響かせる、歌手・ジャイアンの姿も掲載されているから、そちらも見もの。

こんな人間味溢れるトランプは初めてだ。さすが、ジャイアン。
(寺西ジャジューカ)