「誰もがすんなりピカピカの一年生、というわけではないドイツ」【前編】より。

小学校にもすっかり慣れた。
卒業までにはまだまだ時間がある。「小学四年生」というポジションは、あらゆるストレスと無縁な毎日を送っているイメージさえある。ただし、これは日本での話。

ドイツの小学四年生は、3S(スリーエス)が頭から離れない生活を送っている(3S=成績、進路、将来の夢)。なぜなら、小学校は四年生で終わり、五年生からは進路がすぱっと枝分かれするからだ。そして、その進路の先に見えるのは、将来の自分自身の姿なのである。


伝統の地方分権によって州の独立性が強いドイツでは、学校制度も州ごとに異なる。ここでは、ドイツ南西部のバーデン・ヴュルテンベルク州(州都はシュツットガルト。以下バ州と略す)の小学四年生を具体例に紹介してみたい。

時系列的にざっと紹介してみると、次のようになる。九月に始まった前期授業が終わる二月頃、小学校の担任から、四年生全員に成績表が渡される。最も良い成績は「1」で、数字が大きくなるほど心配のタネも増える。
成績発表に引き続き、一斉に個人面談が実施される。そして迎える運命の四月。小学校から、四年生全員に「学校推薦状」が発行され、この推薦状をもとに、五年生以降に進学する学校が決定するというプロセスだ。

今はまだ二月。四年生の前期授業が終了し、前期通知表が配布されるという段階だ。バ州の小学校での履修教科は、算数、国語(=ドイツ語)、郷土と歴史、人と自然、音楽、美術、体育などで、フランスと国境を接しているバ州では、フランス語も必須となっている(その他の州では英語)。


前期通知表の持つ意味は大きい。主要二教科(国語と算数)の成績の平均値が2.5までなら、五年生以降は「ギムナジウム」(大学進学コース)へ、3.0までなら「レアルシューレ」(実務教育学校)、それ以外はハウプトシューレ(主幹学校)のように、進路選択の大きな指針となるからだ。

当然ながら、成績表に納得しない親も出てくる。そんな親が担任相手に直談判できるのが、二月の個人面談だ。四年生男児を持つロシア人の友人が、憤慨して電話してきた。「うちの子はレアルシューレに行かせるつもり。
ところが担任がね、お宅のお子さんには無理だ、きっと授業についていけないから、考え直した方がいいって言うのよ! ったく、面談で担任とケンカしてきたわ!」と、受話器から煙が出て来んばかりの熱弁ぶり。モンスターペアレントもどきは、ドイツにもいるようだ。

成績表を受け取り、個人面談を終えると、やがて三月。上述の「ギムナジウム」(大学進学コース)、「レアルシューレ」(実務教育学校)、ハウプトシューレ(主幹学校)は、毎年三月にこぞって学校見学会を開催する。少子化傾向に拍車がかかるドイツで、「四年生のみなさん、ぜひとも我が校へ来たれ!」のキャンペーンを展開する。我が子を少しでも良い学校へ進学させたい親も必死だが、学校側だって、優秀な生徒集めに奔走しているのだ。


学校見学会の様子は3月の記事にて。
(柴山 香)