洋服には、流行がある。

例えば、有名人や映画の主人公が着ていた服が、流行ることがある。
ゴルフや山登りがブームになれば、それに合った服が売れたりする。そうやって、消費者が流行を作ることは多い。

でも世の中で流行る前に、雑誌なんかで「この夏はマリンがブーム」とか「この冬はキャメル色が流行る」とか、断言されていることがある。各ブランド・メーカーが、一斉に似た服を出して、それが流行りになる。

流行を作った方が服は売れるだろうし、それを取り上げた雑誌も部数が伸びるとは思う。でも、そもそもファッション業界では、どうして先に流行が決まることがあるんだろうか?

アパレル業界の方に聞いたところ、そのひとつの例を教えてくれた。

「まずパリコレのようなコレクションで、世界のトップデザイナーが作った服を発表します。そのあと、その服に影響を受けた他のブランドの人たちが、真似た服を作ります。そして、低価格な服を作るメーカーが、デザインを真似つつ、どんな体型の人でも着やすいよう落とし込んだ服を作ります。こうした流れで、コレクションから数か月後、シーズンに入ると似たような服が大量に出回って、流行と呼ばれる状況になることがあります」

つまり、コレクションを見て「これは売れる」と思ったデザインやテイストなどを、各ブランドがパクって似た服を作る。その傾向を雑誌などがこぞって「流行」として取り上げて、実際に流行るっていう流れ。あくまでひとつの形だけど、デザインに明確な著作権がないファッション業界だからこその、流行りの仕組みかもしれない。
いいことか悪いことかは置いといて。

「特にTシャツやキャミソールなどの春夏物は、短い期間で作れるんですね。シャツもそれなりに短期間で、そのシーズンのうちには作れます。流行してから作り始めても、まだシーズン内に間に合うくらいですから。そうして流行に拍車がかかるんです」

ちなみに服の流行色は、流行色協会が予測して発表した“流行る色”を、各ブランドが取り入れることで決まるって聞いたことがある。これって、実際はどうなんだろう?
「流行色協会からは、多くの色が発表されているので……デザイナーはそれを参考にしつつも、自分の感性で発信していると思います。
例えば2010年の秋冬は、多くのブランドがキャメル色(ラクダ色)の服を出していますが、これはコレクションで、クロエなどの注目されているブランドが大量に発表した色なんですね。それが先ほどのような真似る流れで、流行に至るのではないかと思います」

シーズン前から決まっていることがある、服の流行。
業界特有の模倣の連鎖が、流行を作るひとつの要因になっているみたいです。
(イチカワ)