パソコンが一般に普及して10年が過ぎた。大切なデータが消えてしまったという話は最近よく聞く。
写真や書類など大切なデータを安全に保存するには、どのメディアを選べば良いのか? 簡単にまとめてみた。

主な記録メディアといえば、ハードディスク(HDD)、フラッシュメモリー、光ディスク。
ハードディスクは、パソコン内蔵(CやDドライブなど)や、持ち運べる外付けがある。
フラッシュメモリーは、主に「USBメモリー」、SDメモリーカードなどの「メモリーカード」、HDDと同様に扱える「SSD」、あとiPodなどの「携帯音楽プレーヤー」など。
光ディスクは、CD、DVD、BD(ブルーレイディスク)など。実際には記録用のDVD-RやBD-Rを用いる。


では、それぞれの安全性、寿命を簡単に見ていく。一番安全なのはどれか、結論が出るだろうか?

まずは「ハードディスク(HDD)」。データ記録用の円盤(磁気ディスク)を高速回転させ、磁気ヘッドで読み込む。音楽レコードのイメージだが、ディスクとヘッドは接触していない。もし接触したり、ゴミが引っかかれば、ディスクが傷つき、それは故障・データ損失を意味する。また、ヘッドの読み取りが少しでもずれたらエラーとなる。

このため、衝撃や熱や湿気に弱い。特にノートPCの場合は衝撃に注意。また、このように機械的に動くため、常に故障のリスクも大きい。
「いつ壊れるかわからないHDDは信用できない」という認識が一般的だ。

次に「フラッシュメモリー」。電子を出し入れすることで記録する微細な「セル」と、それを制御するチップの集合体だ。
電気的に記録するので静電気に弱いと云われているが、通常使用でもデータ喪失の危険がある。
書き換えを繰り返すとセルが劣化し、寿命を迎えるということ。ただ、通常の使用では問題がない場合が多い。
しかしながら、大切なデータの長期間保存には、致命的な欠点がある。それは、データが「蒸発」するということ。何もしなくてもセルから自然に電子が抜けだすわけだ。
使い込んでセルが劣化していたら尚更。
「放っておいたらデータが蒸発する。信用できない」

そして「光ディスク」。記録面を化学反応させることで記録するので、光や熱や湿気により劣化する。また、記録面の汚れやディスクのゆがみが、書き込み時や読み取り時にエラーを引き起こす。
仕組み上、エラーはゼロにすることはできないが、少しぐらいならエラー補正があるので問題なし。
劣化によってエラーが徐々に増えていき、補正できなくなったら寿命というわけだ。
ただし、海外製の激安DVD-Rなど粗悪な製品は、新品の時点でエラーが多すぎ、事実上”寿命ゼロ”のものも多い。フラッシュメモリーにも共通することだが、「安物買いのデータ失い」にはご注意。
「劣化して読めなくなる。信用できない」

以上、どのメディアも全く安全でないというのが結論。
正常使用での寿命の目安は、HDDが設計寿命5年、フラッシュメモリーは5年でデータ蒸発、光ディスクは短くて10年ぐらいと考えておくのが無難。

つまり、数年ごとに新しいメディアにコピーし直す必要もある。光ディスクは一応寿命が長いが、5年に1度はディスクを“焼き直し”たほうが無難だ。

もしくは、オンラインのストレージサービスにデータを任せたほうが安全かもしれない。銀行の口座や貸し金庫にお金や貴重品を預けるように、大切なデータは信頼できる専門業者に委ねるわけだ。

なお、自分のミスによるデータ喪失の場合は、すぐにデータ復元ソフトを使えば、データを取り戻せる可能性が高い。また、HDDの機械的な故障やエラーなどの場合でも、専門業者に頼めば復元できる可能性がある。
もちろん手間も時間も費用もかかるが確実に復元できる保証はないので、とにかくこまめにバックアップしかない。

年末の大掃除のように、年に一度、その家に伝わるデータをバックアップという習慣が、必要な時代になっているのではないだろうか。
(もがみ)