アルコールいぞんしょう? いそんしょう?
「そ」と「ぞ」。「依存」の場合、どちらを使ってますか?
「アルコール依存症」とか、「薬物に依存する」などといったニュースの際、NHKではアナウンサーが「いそんしょう」「いそんする」と発音するのが、以前から気になっていた。

一般的に日常語としては、「アルコールいぞんしょう」「薬物にいぞんする」という人が多いと思うが、「いそん」は放送用語なのだろうか? それとも、医学用語? 近年、「いそん」と言うようになったのだろうか?

NHKコールセンターに問い合わせてみると、
「NHKで使用する言葉は、基本的にNHK放送文化研究所の発行している『NHK用字用語辞典』をもとにしておりまして、そこでは依存を『いそん』と読む、『いぞん』でもかまわないとしています」とのこと。

担当者の持つ2004年発行第三版で、すでにそうなっているそうで、
「放送語としては、耳で聞いて、聞き取りやすいほうを選ぶケースもあります。また、文部科学省の定める言葉を基準としています」と説明された。

一般的には「いぞんしょう」と言う人がほとんどの気がするけど、正しくは「いそんしょう」だったのですか? と聞くと……。
「どちらが正しい、正しくないではなく、話し言葉と書き言葉が一致するものではないことはよくありますし、年齢、地域などによっても違いはあるかと思います。いま世間的には『いぞん』が多いかはわかりませんが、『いぞん』には同音異義語の『異存』があり、『依存』は『いそん』なんです。これはNHK用字用語辞典だけでなく、一般の国語辞典でもそうなっているはずですよ」
え!? 慌てて、我が家の『広辞苑 第四版』(岩波書店)で調べてみたところ、ショックなことに、本当にこう書かれていた。

「いそん【依存】(イゾンとも)他のものをたよりとして存在すること」
ずっと「いぞん」が一般的だと思っていたのに……。
ただし、医学用語としては「いぞん」を使うケースが多いようだし、「いぞん」と読むのも決して間違いではない。

同様に、「間髪を入れず」も、一般的には「カンパツをいれず」と読む人が多いが、正しくは「カン、ハツをいれず」で「物事を重ね合わせた間に、髪の毛1筋も入らない=少しのすきもない」だと、知識としては知っている。
これは昔、「『カンパツいれず』と言うのは間違いだ!(怒)」と学校の先生が強調していたからだが、かといって、正しく「カン、ハツをいれず」と言うと、人に不思議そうな顔をされそうな気もして、結局、小心な私は、先生の教えに背くこともできず、多数派に異を唱えることもできず、曖昧に「カンハツ(モゴモゴ)」と濁して、どっちつかずの距離をとってきた。

「正しい」「正しくない」では、決められないことが多いから、「言葉」というのはむずかしい。たぶん「依存」も今後、人前で「イソン」とは言えない気がするけど、それでも、知識としては「辞書では『いそん』」と覚えておきたいと思います。

(田幸和歌子)