2017年10月よりBS-TBSで放送予定だったアニメ『されど罪人は竜と踊る』の放送開始が、半年間延期となった。理由は「制作の都合上」と発表されている。


アニメ制作の窮状を逆手に取った「彼氏彼女の事情」


ほとんどのアニメ作品は少ない予算とギリギリの制作スケジュールに追われているが、そんな制作現場の窮状を逆手に取ったような作品が90年代に存在した。
1998年10月から、翌99年3月までテレビ東京系で放送された『彼氏彼女の事情』である。原作は『LaLa』(白泉社)に連載された津田雅美による少女漫画だ。

ストーリーは進学校で仮面優等生を演じる宮沢雪野が、すべてにおいて完璧な男子、有馬総一郎に出会う。最初はライバル関係から嫉妬心を燃やすも、有馬にも雪野に似た心の闇があり、お互いに惹かれてゆくというものだ。

監督を務めた庵野秀明


ラブコメの要素がありながらも、気難しい心理描写も含むアクの強い作品を、アニメ化したのが庵野秀明であった。
前年97年夏の『新世紀エヴァンゲリオン』劇場版シリーズ、実写作品『ラブ&ポップ』(98年1月公開)を経た庵野の最新作として注目された。


逆境を逆手にとった描写も


『彼氏彼女の事情』では、制作スケジュールがひっ迫していたのか、漫画のコマをそのまま流し、声優にしゃべらせるといった大胆な描写が登場。当時は物議を醸したが、ハードな制作スケジュールはもとより、予算もかなり少なかった状況から生み出された苦肉の策ともいえる。

さらに本作では、素人同然の人物を声優としてキャスティングしたことでも話題に。その中でには劇作家として活躍する芥川賞作家の本谷有希子もいた。
彼女が起用されたきっかけは通っていた演劇セミナーのゲストに庵野が来た時、ほかの受講者と異なり、彼女があえて興味のない態度を取っていた姿が庵野の目に止まったためといわれる。

低予算・ハードスケジュールを逆手にとった『彼氏彼女の事情』はコアなファンを獲得し、現在はDVD化されている。



※文中の画像はamazonより彼氏彼女の事情 Op.1 [DVD]