女優の鈴木砂羽が自らが主演、演出を手がけた舞台『結婚の条件』において、開幕直前に鳳恵弥と牧野美千子の2名の女優が降板し話題となっている。
2人は鈴木から「人道にもとる数々の行為」を受けたと告発。
土下座強要などが話題となったが、鈴木側は否定している。

世間では批判されるも、芸能界からは演出行為は厳しさを含むものとして鈴木を擁護する声も多い。
確かに2016年に亡くなった蜷川幸雄の「灰皿投げ」など過激な演出手法が取りざたされることもある。

鬼演出家だったテリー伊藤


そして90年代、テレビの世界にも鬼演出家が存在した。現在はタレントして活動するテリー伊藤である。

現在は主にコメンテーターとして活躍するテリーだが、もともと『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』(ともに日本テレビ系)、『ねるとん紅鯨団』(フジテレビ系)、『浅草橋ヤング洋品店』(テレビ東京系)など、数々の名物バラエティ番組を手がける名演出家として名を馳せた。

テリー伊藤の破天荒エピソード


演出家時代のテリーは激怒すると手がつけられなかった。気に入らないことがあると、物を投げ散らかすため、あらかじめ手に取れそうな物を片付けておく配慮がなされていたという。


さらに企画会議も熾烈だった。会議の様子は、構成作家見習いとして参加していた浅草キッドの水道橋博士が『藝人春秋』(文春文庫)で記している。

ある日の会議でテリーは「企画にラテンのノリが足りない」とスタッフにテキーラを買いに行かせ、その場で酒を飲みながらの会議となった。もっともテリー自身は下戸で飲めなかったようだ。

さらには、スタッフ全員に金髪を強要することもあった。次の会議では全員が髪の毛を染めてきたという。


テリー伊藤のテレビ哲学


破天荒なエピソードが注目されがちなテリーだが、彼の「テレビ哲学」が伺える一面もあった。

ある日、若い作家たちが書いてきた分厚い企画書に目を通し「漢字が多いんだよ!」と激怒。「テレビは子どもからお年寄りまで誰もが見るものであり、企画はひらがなで説明できなければ視聴者に伝わらない」という理由からだった。

ハチャメチャではあるが、それだけテレビにバイタリティがあった時代でもあり、名演出家なくして名作なしとも言えるだろう。


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