日本テレビ系のドラマ『東京タラレバ娘』が、話題を呼んでいます。視聴率は初回(13.8%)⇒2回(11.5%)⇒3回(11.9%)⇒4回(11.4%)と、今一つ調子が上がらないものの、アラサー女子のリアルを描いたストーリーの評判は上々。
今後の展開次第では、右肩上がりに数字を伸ばしていくかも知れません。

さて、そんなタラレバ娘で、主人公・鎌田倫子を演じている女優といえば、吉高由里子です。
現在28歳。これまで数々の連ドラ・映画でメインキャストを張り、2014年のNHK連続テレビ小説『花子とアン』ではヒロインにも抜擢。その際、モデルとなった村岡花子になりきるため、史実に即して、左利きから右利きへの矯正を試みるなど、相当なプロ意識をもって仕事へ臨むことでも知られています。

そんな彼女の女優魂が極限まで発揮された一幕が、今から10年ほど前にありました。


「人間的にとんがっていた」昔の吉高由里子


10年前というと、吉高はまだティーンエイジャー。高校1年生の頃、原宿でスカウトされて芸能界入りした彼女は、そのわずか数年後に出演した映画『紀子の食卓』(2006年公開)で、ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。早くから若手演技派女優として注目されていました。そのため、本人曰く「人間的にとんがっていて、周囲への感謝を知らなかった」といいます。

若くして成功を掴んだ者が陥りがちな、自分は特別な存在という全能感。そんな感覚のまま、好き放題振舞った結果、仕事がなくなったタレントが過去にどれほどいたことでしょうか。

交通事故で、集中治療室に入るほどの重傷を負う


しかし、そんな天狗になりかけていた吉高に、アクシデントが襲います。
2007年9月、オーディションで映画『蛇にピアス』の主演を射止めた翌日、交通事故に遭ってしまったのです。
それも、顎の骨を折る全治半年にもなる重傷。そのため、集中治療室へ数日間入り続けることになります。

こうした体験を通して、女優生命どころか、本当の生命の危機も感じたという吉高。
「いかに、周りに助けられていたのかを知るきっかけになった」と後に語っているように、この事故並びに入院経験は彼女にとって、人生の大きな転機となったようです。

「裸を見ないで撮れるんですか?」蜷川幸雄の前で裸に


この一件で吹っ切れた吉高は、復帰後に出演した『蛇にピアス』で、周囲の度肝を抜く行動に打って出ます。

それは、衣装合わせのときのこと。
彼女は監督を務めた故・蜷川幸雄に「ほとんど裸の映画なのに、裸を見ないで撮れるんですか?」と発言。
そこで蜷川が「じゃ、見せて」というと、更衣室へ行って躊躇なくパっと素っ裸に。「あ、大丈夫、大丈夫、撮れる、撮れる」と、逆に世界の蜷川を狼狽させたというのだから、その思い切りの良さたるや、たいしたものです。

吉高は作中においても、大胆なヌードシーンを次々と披露して見せます。特に、高良健吾と演じた濡れ場は凄艶の一言。赤髪モヒカン&ピアスまみれという、普段の好青年風な風貌とはかけ離れたパンクスタイルな高良と行為に及んでいるシーンは、何とも生々しくて衝撃的です。


こうした体当たりの演技が評価され、日本アカデミー賞新人俳優賞、ブルーリボン賞新人賞、日本映画批評家大賞新人賞を受賞して、一躍ブレイクを果した吉高由里子。彼女が女優として一皮も二皮も剥け、大成するきっかけとなった記念碑的作品としても、映画『蛇にピアス』は、今後も語り継がれていくことでしょう。
(こじへい)

※イメージ画像はamazonより蛇にピアス [DVD]