2016年11月26日、モーニング娘。の元リーダー・道重さゆみが、自身のブログで来春からの芸能活動再開を宣言しました。
卒業から丸2年。待望の復帰とあって、各芸能メディアでトップニュースとして報じられたのは、記憶に新しいところです。
その吉報から3日後。一人の元・モー娘。が、ひっそりと事務所との契約終了を公表しました。彼女の名前は久住小春。
かつては「ミラクル」とまで称された元アイドルです。

つんく♂も大絶賛する逸材だった久住小春


「これミラクルちゃうん?」

モーニング娘。オーディション2005の最終審査。モニターを見つめるつんく♂は、思わず唸りました。
画面に映し出されていたのは、当時12歳の久住小春。もともと、このオーディションのコンセプトは“エースを探すこと”。事務所としては、人気に陰りが見え始めていたモー娘。
を再興へと導く、かつての後藤真希のような救世主が必要だったのです。
そんな折に現れた、大きな黒い瞳が印象的なこの美少女に、つんく♂は無限の可能性を感じたに違いありません。応募総数21,611名。その中から唯一の合格者としたのは、そんな期待の表れだったといえるでしょう。
かくして、モーニング娘。7期生としてデビューした久住。
彼女の教育係に任命されたのが、その2年前から活動していた道重でした。

挨拶ができない、極度の音痴…ポンコツだった道重さゆみ


道重は久住のような「期待の星」ではありませんでした。モー娘。の振付師として有名な夏まゆみ先生曰く、オーディション当時の彼女は「極度の引っ込み思案だった」とのこと。「おはようございます」の挨拶もできない、「はい」の返事も蚊の鳴くような声といいます。
さらに絶望的だったのは歌。「歌に音程があることを知らなかった」と後に語ったその歌唱は、経文を唱えるかの如き平坦さで、ファンの度肝を抜いたものです。


こうした、全く異なるスタート地点からアイドル人生を開始した2人。性格も対照的で、奔放で常識外れな久住に対して、真面目な道重は教育係として相当苦労したそうです。
「電話線繋いでください」「テレビの録画してください」と、まるでパシリのように部屋へ呼び出されることもしばしば。あまりのストレスから、道重は眉毛を抜くという自傷行為に走ったといいます。そんなこともあり、久住の卒業コンサートでは「正直、あなたのことが嫌いでした」と言い放った道重。その胸中たるや、推して知るべしというものでしょう。


伝説となった久住小春の「踏み台」発言


かくしてモー娘。を去った久住でしたが、卒業後も『おはスタ』のレギュラーに抜擢されたり、『CanCam』のモデルに起用されるなど、一定の成功を収めていました。しかしその芸能生活は、2013年1月19日に放送されたラジオ番組『ヤングタウン土曜日』への出演により、大きく暗転することに。

この日、ゲストとして招かれた久住は、「モー娘。は踏み台」「アイドルは男に媚びている」という旨の放言を連発。ついには、「自分にとってモー娘。に入る以上の夢はない」と断言するレギュラーの一人・道重に対して、「絶対ウソだ!綺麗過ぎる!」と糾弾する始末。
結果、彼女の悪評は世間一般に知れ渡り、活躍の場を失っていきました。

嫌われる久住、愛される道重


一方の道重はというと、2009年ごろよりテレビでの露出が増えていきます。歌もそこそこ改善され、何よりもピンのラジオ番組で長年鍛えたトークスキルを武器に、様々なバラエティ番組において、「毒舌・ぶりっ子キャラ」として活躍。そこに、かつて引っ込み思案だった少女の姿はありませんでした。
また彼女には、メディアへ出なければならない理由もありました。それは「今のモー娘。を、少しでも多くの人に知ってもらいたい」というもの。自分に夢を抱かせ、育んでくれたグループに恩返しがしたい…。その一心で、彼女は自ら広告塔になることを決意。想いはカタチとなり、リーダー就任後には、黄金期にも成しえなかった「シングル5作連続1位」を達成。こうした功績から惜しまれつつも引退し、復帰を発表すれば多くの人から祝福されるスターへと上り詰めたのです。

2人の命運を分けたものとは?


10年あまり前。“エース候補”として期待された逸材が高いポテンシャルを発揮できぬまま自滅し、逆に、極度の音痴で挨拶もろくにできなかった人物が開花し、グループの救世主になろうとは誰が予想できたでしょうか。

しかし、普通の女の子がアイドルになる過程を楽しむことこそ、モー娘。最大の魅力だったはず。そう考えれば、道重のようにひたすらグループへの愛を貫き、その気持ち一つだけで、何もないところから成長できる人材こそ、ファンが求めているモー娘。本来の姿に、より近いのではないでしょうか? 
道重と久住。対照的な命運を辿った2人は、今後モー娘。を、そしてアイドルの在り方を語る上で、重要なケーススタディとなりそうです。
(こじへい)

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