今から10年ほど前、日本テレビの深夜で、『カミングダウト』というバラエティが放送していたことをご存知でしょうか? 

これは、暴露を意味するカミングアウトと、トランプのゲーム・ダウトを掛け合わせた“騙し合いカードバトル”を繰り広げる番組。毎回芸能人4組をプレイヤーとして招き、1組が自らの秘密を告白→他の3組が嘘か真実かを当てる→別の1組が告白……という流れで進行していきます。

勝敗を分けるのは、相手の嘘を看破する洞察力と自分の嘘を見抜かせない演技力、そして駆け引きの巧みさ。『食わず嫌い王決定戦』の料理が暴露話に摩り替わった、と考えていただけると分かりやすいでしょう。

驚きの真実が次々と明かされた『カミングダウト』


出演タレントの暴露話には、具体的にこんなものがありました。

■笑い飯は官能小説家だった⇒本当。自分で興奮するためだけに書いてる。
■(隣に男性を座らせて)この人は私、安田美沙子の元彼氏⇒嘘。本当は双子の弟
■劇団ひとりは今、ウンコをもらしている⇒本当。
実際にオムツの中でおしっこと一緒に漏らした

上記のように毎回、様々な虚実混ざった告白が飛び交ったものです。そんな同番組において、もっとも衝撃的なぶっちゃけ話をしたのが、タレントのあびる優でした。

「ダンボールに詰めて、5~6人で運んだ」


2005年2月15日放送分において、プレイヤーの一人として出演していた、当時未成年のあびる優の告白は次のようなものでした。

あびる優「集団強盗でお店を潰したことがある」

彼女によると、この犯罪行為に及んだのは「ちょっと前」とのこと。お店の倉庫から食べ物や飲み物をダンボールに詰めて、5~6人で運び出していたといいます。
この時点では、まだ嘘か本当か分かりません。そこで「1回くらいはあるでしょ? 見つかったこと」と、プレイヤーの一人、お笑いコンビ・レギュラーの西川くんが探りを入れる質問をします。
するとあびるは「配送業者を装ってごまかしていた」と発言。しかも、この計画的・組織的犯行を、約半年に渡り続けていたというのだから、にわかに信じ難いというものです。

日本テレビに視聴者からクレームが殺到


実際、「そんなわけあるはずがない」と思ったのか、嘘か本当かを判断する『ダウトタイム』において、レギュラーの西川くんは「ダウト!」とコール。しかし、彼の予想に反してこの告白は真実であることが判明。「お店の人、本当にごめんなさい」とおじぎをするあびる。さらに「万引きは犯罪です 絶対にやめましょう」というテロップも表示されました。

もちろん、これで一件落着となるはずもありません。
明らかな反社会的行為を面白おかしく放送した『カミングダウト』及び日本テレビへは、視聴者からの抗議が殺到。
それを受け、翌週の放送冒頭で「先週の当番組で、未成年のタレントの不法行為を取り上げるという不適切な放送がありました。 視聴者および関係者の皆様にご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。」というテロップで謝意を表明します。

わずか2ヶ月後に復帰したあびる優


あびるの所属先・ホリプロも事態を重く受け止めて、彼女の芸能活動を無期限で休止させると発表。しかし、たった2ヶ月後の同年4月19日には『アッコにおまかせ!』(TBS)であっさりと復帰していました。

いずれにしても、「倉庫あらし」のような明らかな犯罪行為を、武勇伝のように放送した場合の社会的影響は計り知れません。
テレビを放送する側と、そして出演者側。双方のモラルが大きく問われた事件として、今後も語り継がれていくことでしょう。
(こじへい)

※イメージ画像はamazonよりあびる優 LOVE POISON【image.tvデジタル写真集】 Kindle版