ワルオヤジ的イメージで語られる大竹まことだが…
こうしたエピソードや、バラエティ番組での歯に衣着せぬ発言、少し強面な外見などから、ちょいワルオヤジ的イメージで世間的に語られることが多い大竹。
しかし、傍若無人に思われがちな大竹にも、ナイーブな一面は当然あります。それが如実に垣間見られた出来事が、1996年にありました。
事故で若者が死亡…2日間飲まず食わずだった大竹まこと
96年8月8日午前2時20分ごろのこと。東京都杉並区高井戸東の隘路を進行していた大竹の車が交差点に差し掛かった時、二人乗りのオートバイが出会い頭、車体横に衝突。この衝撃で、バイクに乗っていた男女は、路上に吹き飛ばされます。後部座席に座っていたフリーターの男性は頭部を強打し、翌日、急性硬膜下血腫で死亡。後部座席に座っていた女性は全身打撲の怪我を負いました。
この一件、大竹さんが酒気帯びや居眠り運転をしていたわけではなく、しっかりと信号も守っていましたが、やはり、人を殺めてしまったという罪の意識が彼を苦しめました。
事故のあった夕方には病院を訪れ、被害者の家族に侘びを入れた後は、自宅に引きこもりっぱなし。
「涙を流してはいけない」ビートたけしの助言
そんな精神的ダメージを抱え、レギュラー番組への出演も自粛していた大竹でしたが、被害者の両親から「早く仕事に戻ってください」との連絡が入ります。彼の事故後の誠意ある対応や配慮が、遺族の心を動かしたのです。「(男女)どちらのご両親からも立派な言葉を掛けてもらいました」と、報道陣の囲み取材に応じ、目を真っ赤に充血させながら述べた大竹。
けれども、彼は決してカメラの前で涙をこぼしませんでした。その裏には、ビートたけしからのこんな助言があったといいます。
「芸能人は絶対に謝罪で涙を流したり、感情を露にするなど“素”を観衆に見せてはいけない。次に何を演じても客が引いてしまう」。フライデー襲撃事件における謝罪会見の際、レポーターからの厳しい質問攻めにも、冷静かつ論理的な受け答えで捌いてみせた、彼の経験則に基づく哲学といえるでしょう。
このアドバイスを体現し、大竹は見事、公衆の面前では“素”を出さなかったのです。豪気で鳴らす男の心根にある誠実さ、そしてタレントしての神髄を見た出来事でした。
(こじへい)
※イメージ画像はamazonより完全版 こんな料理で男はまいる。