やらせか否かというのは、ドキュメンタリー系のバラエティ番組にはつきものといっていい嫌疑。現在放送中の『テラスハウス』にも、何度となくそういった疑惑が持ち上がり、一部メディアで騒がれています。

もともとは、1985年、テレビ朝日の情報番組『アフタヌーンショー』で起きたリンチ事件の捏造によって、広く知られるようになった、この「やらせ」という言葉。それまで、テレビは全て“リアル”であると信じていた一般視聴者に、大きな衝撃を与えたのは言うまでもありません。
以降、「やらせ」に向けられる世間の視線は格段に厳しいものとなり、今となっては、演出の範疇ではないかと思われるものまで、ネットで糾弾されるという、視聴者=批評家の時代に突入しました。

しかし、そんな視聴者の目をかいくぐり、90年代より後に放送され、あまつさえ高視聴率を獲得したやらせ番組もいくつか存在します。その一つがみのもんたが司会を務めたフジテレビ系のバラエティ『愛する二人 別れる二人』でした。

夫婦同士の“リアル”な喧嘩が見ものだった『愛する二人 別れる二人』


1998年10月19日から1999年11月8日にかけて放送されていた『愛する二人 別れる二人』。一般公募された離婚の危機に直面する夫婦が結婚生活を続けるか、別れるかの2択を選ぶという内容の番組でした。

「あんた、他に女がいるんでしょ!?」「うるせぇなぁ、お前だって家事もろくにしないで…」などという口論に始まり、挙句の果てにはつかみ合いの泥仕合に突入。それをスタッフや司会のみのが止めに入るという、スリリングな展開が繰り広げられ、視聴者は手に汗握ったものです。

ちなみに、パネラー席から夫婦(特に嫁の方)に、よくご意見番然としてキツイ言葉を吐いては、言った相手からモノを投げられていたのが、当時まだ知名度があまりなかったデヴィ夫人。彼女はこの番組をきっかけに、スカルノ元大統領夫人というポジションから、親しみやすいバラエティタレントと化していったのです。

浮気相手が都合よくスタンバイ!? 不自然な点が多かった番組


さて、そんなセンセーショナルな内容がウケて、『愛する二人 別れる二人』は、視聴率20%以上を連発。現在、その凋落ぶりばかりがクローズアップされるフジテレビにおいて、考えられない好成績をたたき出していたわけですが、あきらかにご都合主義な展開に「やらせではないか?」との疑惑も噴出していました。
例えば、夫婦の片方がキレて暴れだすときにカメラ割りがしっかりと構成されていること、そもそも離婚の危機に瀕している夫婦が普通にテレビに出ていること、愛人まで都合よくスタンバイしていることなど…。
リアルだという方が無理というものでしょう。

実際、番組制作を一任された制作会社「ジャパンプロデュース」は、「やらせの常習犯」として有名でした。そのため、企画段階においては、一部の若手編成マンから番組開始自体を反対する建白書が提出されたそうです。しかし、当時編成部副部長だった大多亮がこれを握りつぶします。結果、やらせを黙認するカタチで放送に踏み切ったのです。

出演者の自殺でやらせが明るみになった『愛する二人 別れる二人』


やらせ疑惑が幾度となく持ち上がりながらも、決定的な証拠がないため放送され続けていた『愛する二人 別れる二人』でしたが、最悪のカタチでその事実が発覚します。
番組に出演していた一般女性が自殺した際に、発見された遺書の中に「やらせ」があったことを書き残していたのです。自殺した女性は未婚でした。
この事件を機に、番組の腐敗ぶりは白日の下に晒され、フジテレビ内部からも「社会的にあまりにも問題がありすぎる」としてあえなく打ち切りに。後日談によると、制作に関わっていた人間だけでなく、司会のみのもんたも事実の捏造を知っていたといいます。
それから17年の時を経た現在。同局のやらせへの黙認体質は果たして改善されているのでしょうか。

(こじへい)

※イメージ画像はamazonより敗者の報道