TBSでやっていた『筋肉番付』という番組を覚えているでしょうか? 1995年から2004年まで放送されていた同番組。内容は、素人・アスリート・芸能人が様々なオリジナルの競技にチャレンジするというもので、つい先ごろ『報道ステーション』のキャスターを降板した古舘伊知郎も、メインMCとして華を添えていました。


世界的人気を誇る『SASUKE』


そんな『筋肉番付』の企画からスピンオフし、スペシャル番組として長年人気を博しているのが『SASUKE』です。毎回100人の一般参加者が、4つのステージに分かれた巨大アスレチック攻略を目指すというこの特番は、なんと現在まで31回も開催されているのだとか(2016年4月時点)。さらには、海外でも「Ninja Warrior」として、日本の番組では最多となる世界165の国と地域で放送されているというのだから驚きです。

完全制覇者は3,100人中、たったの4人


さて、この『SASUKE』ですが、人気と共に難易度の高さも群を抜いています。これまで約3,100人が挑戦しているのに、完全制覇者はなんとたったの4人。全国の筋肉自慢・スポーツマンが集まっているのに、この数字です。難攻不落の障害物へ果敢に挑むも、あえなく脱落……。そんなシーンが幾度となく繰り返されてきました。

だからこそ、チャレンジャーはまるでRPGの魔城に挑む勇者のような気持ちになり、1stステージから最大限のエネルギーでぶつかっていくのでしょう。時にそのエネルギーが、魔城の高く聳え立つ牙城に跳ね返され、怪我を負ってしまうケースもしばしば。高難度のアスレチックですから、ある程度の負傷は仕方ありません。打撲・打ち身・捻挫程度なら、チャレンジャーもスタッフも想定の範囲内だと思われます。しかし2002年5月、起きてはならない事故が起きてしまったのです。

2つの大事故…『筋肉番付』打ち切りの事態に


この日、横浜市青葉区のTBS緑山スタジオで『SASUKE』の類似企画『力島』の収録が行われていました。
ここで大学生2人が重傷を負ったのです。事故が発生した箇所の一つは、坂の頂上から転がり落ちる大玉を受け止めて、坂の上まで押し上げる「ロックアタック」なる種目。挑戦した東海大学の学生が、落ちてくる玉を受け止めきれずに転倒して玉の下敷きに。意識不明・両足麻痺の重体となりました。
もう一つは、大玉の上をまるでサーカスのピエロのように乗りこなし、幅2.5メートルの水路を渡る「ロックバレー」なる競技でのこと。京都大学の中国人留学生がバランスを崩し、玉から落下。
病院に搬送された後、頚椎骨折と診断されました。以後、半身不随の状態が続いているそうです。

この事態を重く受け止めたTBSは同月24日、番組の打ち切りを正式に表明しました。しかし、その後、2006年に『SASUKE』の女性版『KUNOICHI』で感電事故、2007年に『SASUKE』で足の複雑骨折者を含む5人の重軽傷者を出している同社。加えて、警察への通達を怠るなど、事故への安全確認・事故後の対応、共に問題視されています。

そして今年の夏、『SASUKE2016』と題した特番が放送される予定です。
TBSの公式ホームページにも開催を知らせる報が掲載されており、そこにはこんな文言が記載されています。
「『SASUKE』の制作に際しては、参加された方々の安全を確保するための万全の対策を行っております。」
ぜひ有限実行し、過去の過ちを繰り返さないで欲しいものです。
(こじへい)

※イメージ画像はamazonより筋肉番付Vol.2 新たなる限界への挑戦